ｸｲｽﾞ大陸

　期末試験初日の木曜日のその朝、最後の追い込みをかけようといつもより一時間以上早く学校に着いた庵郷トキオは、校門のところに二台のパトカーを見つけた。
　登校時間にはまだ時間があるせいか、人だかりができているわけではなかったが、数人の警察官と制服姿の生徒が見えた。そのうちの一人の女子生徒がトキオを見つけて声をかけた。
「あ、おはよう」
「麻衣子、どうしたんだよ？」
「それが、どうも殺人事件らしいの」
「殺人って、うちで！？」

　殺されていたのは、同じ学年の木梨 緑（きなし・みどり）。遺体発見現場は体育館で、殺人現場もそこと見られているようだった。トキオを知っていた刑事から聞き出した話によれば、犯行時刻は昨日の午後６時から８時辺りと見られているとのことだった。
　被害者の木梨 緑は大の推理クイズ好きで通っていて、友人数名と「暗号倶楽部」なる集まりを作り、互いの連絡も自作の暗号でやり取りしているという話を聞いたことがあった。
　果たして、被害者のポケットからは暗号らしきメモが見つかった。


　　ほら 牛なら籠無し 体内 串咬んで


「本当。暗号ね、これ」
　刑事から内緒で見せてもらった紙片を見て御手洗麻衣子は言った。
　トキオは文章を記憶しようとじっと見つめながら答えた。
「そうだけど、被害者が書いたものか犯人が書いたものか、これじゃあ分からないな。でもこれが犯人の書いたものなら、『暗号倶楽部』の誰かであることはほぼ決まりだよ」

　やがて、「暗号倶楽部」のメンバーで昨晩のアリバイの無い者が五人、洗い出された。


　讃岐 健史（さぬき・たけし）
　白鳥 菜摘（しらとり・なつみ）
　陣内　悟（じんない・さとる）
　服部 桐子（はつとり・きりこ）
　疋田 美散（ひきた・みちる）


　リストの名前を見て、トキオはすぐに何かに気付いたようにクスッと笑った。
「なるほど、『暗号倶楽部』ってなかなか面白いことやってたんだなあ」
「意味がよく分からないけど、ちょっと不謹慎じゃない？」
　麻衣子はトキオを嗜（たしな）めた。
「ごめんごめん。でも犯人はこの人だと思うよ」


■さて、トキオは誰を犯人と考えたのでしょう。

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一年ぶりの投稿です。
ひでぽんさん、Yossyさん、ご無沙汰してます。覚えてますか？