ｸｲｽﾞ大陸

**正解発表**

牧田が野上に問いかける。
「密室殺人じゃないって、どういう事です？」
「牧田さんは密室の謎って、どんなパターンがあると思います？」
・・・うーん、
1．犯人が鍵をかけて、その鍵を中に入れる
2．どこかに抜け道がある
3．被害者が自分で内側から鍵をかける
4．事故、自殺など、犯人が存在しない
・・・こんなところかな・・・と牧田が答えた。

「駄目ですよ〜大事なのが一つ抜けてるわ。
　【犯人がまだ中にいる】　って事ですよ。
多分、状況はこういう感じじゃないかしら？
　犯人は部屋に鍵をかけた状態で被害者の田中愛さんを殺害したが、現場を立ち去る前に予期せぬ訪問者がやってきた。
出るに出られなくなった犯人は、窓から逃げようとしたかもしれませんが、アパートの3階から下に降りるのは難しいでしょう。
その場に閉じこもるしかなかったんじゃないかしら？訪問者が諦めて帰ってくれるのを期待していたかもしれませんね。
もしくは、放心状態か、覚悟を決めていて、逃げるつもりもなかったとも考えられますね。
どちらにしても、訪問者は不審に思って管理人と一緒に部屋に入り、犯人と対面した・・・」

牧田はそこで、ほーっと唸ったものの、疑問をぶつけずにはいられなかった。
「だけど、どうやってその推理を導き出したんですか？」

「福山主任が友坂君だけを呼んだからですよ。既に犯人が捕まっている事件でなければ、彼一人だけが呼ばれる事もないでしょう。
確かに課長も現場に向かったけれど、やはりそれは事件に遭遇してしまった知人を守る事が第一。
と考えると、私や牧田さんが呼ばれないのはオカシイわ。
それに、一番気になったのは、友坂君が課長を迎えに行った事ですね。
きっと、主任は友坂君に現場を見せたかったのと、ついでに課長をお連れして欲しいと思ったんじゃないかな？
それから、牧田さんも気にしてた、友坂君が電話で言っていた”ホシがセイ”っていうのね、ホシは犯人の姓ですよ。
空の”星”かな？アクセントが少し変な気がしたんですよ。ホが強かったんです、気づきました？
福山主任が友坂君に犯人の名前を電話で伝えてたのなら、姓がホシ、だけじゃなく名も言うはず。名はキョウキっていう変わった名だったんでしょう」

牧田は感心してうなずいた。
「そうか、被害者の名前がタナカ・アイ、犯人の名前がホシ・キョウキ・・・会話の流れも自然だったな・・・。事件は解決していたってことか・・・
　そりゃあ、密室殺人のはずは無いよなあ・・・」
「ね！ホシは本当に”ホシ”っていう名前だったのが、偶然で面白いですよね。
牧田さんに”ホシはホシでしょう？”と聞かれた時は、つい吹きだしそうになっちゃったわ」
牧田もそこでプッと笑ってしまったが、起きたばかりの殺人事件に思いを馳せ、顔を引き締めた。
「友坂にも早いとこ仕事を憶えさせないとな、もっとキチンと状況を説明してから出かけろっての！」

後の福山と友坂の報告で事件は野上の推理通りだった事がわかった。ちなみに、被害者の名前は田中藍、犯人の名前は星杏樹だった。