クイズ大陸



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?kaito 2005/02/19 18:35
【解答篇】

夏美は刑事課にある形ばかりの応接セットにトキオを座らせ、自分も向かい合わせに腰を下ろしてから聞いた。
「それで庵郷君、その、次のターゲットはどこなの?」
「まず僕が気になったのは爆弾を仕掛ける先です。特に裁判所はターゲットとしてはちょっと違和感があったんです。きっと『裁判所』であること自体に何か意味があるんじゃないかと思いました。
次に目を付けたのは予告状の書き出しです。病院の時は病院と書かずに『医療現場』、電話ボックスの時は『通話設備』という表現を使っていました。それで僕は、このターゲットの呼び方に何か隠されているなと考えました。

 警察署
 医療現場
 裁判所
 通話設備
 小学校
 予備校

これらから思いつく場所──これらの最初の文字を拾っていくと・・・」
「けいさつしょ!」
「そうなんです。犯人はこれまでの一連のターゲットに『警察署』という言葉を隠していたんです。
犯人は次に警察署に爆弾を仕掛けて、きっとこんな予告状を出してくるはずです。

 『小学校と予備校も助けられたようだな。
  次の爆弾を仕掛けた。
  これまでの予告状の中にすべてヒントは出しておいた』

──って。」
「でも警察署にはもうすでに一度仕掛けたんでしょう?」
「まだ見つかってませんよ」
「それはそうよ。警察署は警備が厳重で、とてもじゃないけど爆弾を持ち込んで仕掛けるなんてことは・・・あっ!」
夏美は気付いて愕然とした。署員総出で捜索に当たっている今の警察署は、普段よりも閑散として、警戒も甘くなっているのだ。
「普段は不可能なことも、今なら可能です。これからここに張り込みましょう。僕は一度家に帰ってきます」

 * * *

翌日の月曜日──
学校を仮病で休んで、今日もトキオは警察署に向かった。昨日は結局、不審な人物は現れなかった。
犯人の目があるかも知れないことを警戒して、誰にも見られないように裏口から署内に入り、陰に身を潜めている夏美と合流する。
何時間経ったか、電気工事員風の男が一人、丈夫そうなバッグを携えて入ってきた。トキオは夏美に目配せし、夏美もそれに黙って頷いた。
男が入り口のカウンターで配線の定期点検に来たと言うと、中の署員は忙しそうな手を休めることもせず、「ああ、よろしく」と声だけで応えた。
二人は男の後を気付かれぬようにつけ、階段を通り過ぎて裏側の隠れた部分に折れ入ったところを取り押さえた。


夏美がバッグを開けると、そこには黄色の立方体が二つ、入っていた。
「二つ?」
夏美だけが少し驚いた。
「それが犯人の、もう一つの目的です。つまり、七つ目の爆弾を仕掛けると同時に、一つ目の爆弾を仕掛けるということです。
普段なら爆弾は仕掛けられない。でも、見事に仕掛けられればそれもまた犯人の勝利となる。警察は侵入を許し、爆弾の発見もできなかったことになるからです。そこで犯人は、七つ目と共に一つ目の爆弾も併せて仕掛け、さも初めから仕掛けてあったかのように装うつもりだったんです。
警察は一つ目も見つけられず、その上、七つ目も仕掛けられた。都合二回も侵入を許したことになるんです」
トキオは説明を終えると、さっさと帰り支度を始めた。
「あら、庵郷君、もう帰るの? もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「警察署でゆっくりできる人間なんていませんよ、夏美さん。それに今日は先約がありますから」
トキオは少し笑って、小走りに警察署を出て行った。
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