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Yossy
2005/02/11 20:35
ここで秘書が犯人だと仮定した場合、どうして密室を偽装する必要があったのか、またどのようにして偽装を行ったのかを解明しなければなりません。
秘書は東京に向けて出発する前まで一緒にいた自分が、真っ先に疑われることは承知していたでしょう。
ですから自分には犯行が不可能だと思わせる状況を作り出す必要があったのです。
つまり私たち警察に、たとえ玄関の合い鍵を持っていても玄関からの侵入、逃走は不可能であり、犯人は庭から侵入し逃走したのだと思わせるために、ドアチェーンを掛ける必要があったのです。
ではどうやってドアチェーンを掛けたのでしょうか。
ここで私が真っ先に思い浮かべたのは「本当にドアにチェーンが掛かっていたのか?」ということです。もし「ドアにチェーンが掛かっていた」という証言が虚偽であれば、最初に駆けつけた我が署員が共犯ということになります。しかしこの署員が共犯であるためには、「自分が必ず最初に一人で現場に行くことになる」ことを知っている必要があります。現場への急行を命じたのは私ですから、そんなことがあるとは思えませんでしたが、一応その署員と被害者、秘書に何らかの関係があるか否かを調査した結果、幸い何の関係もないことが立証されました。
ここでもう一度犯人の行動を振り返ってみました。
まず書斎で被害者を殺害。サッシのガラスを割り、庭に降りて足跡をつけ、犯人が崖から来たように偽装。
玄関から出て何らかの方法で外からドアチェーンを掛け、合い鍵で施錠する。・・・・このとき何か漠然とした違和感が頭をよぎりましたがすぐに消えてしまいました。
「やはりどうやって外からドアチェーンを掛けるかがポイントだな。」と思いました。
私は現場に戻り、もう一度ドアチェーンをよくよく観察してみました。チェーンは切断されていましたが長さは20センチ弱。チェーンを掛けた状態で開くドアは15センチ程度と思われました。普通のドアチェーンで、ドア枠に鎖が付いたチェーン金具が取り付けられ、ドアには鎖受座が取り付けられています。ドアを閉めた状態のときのみチェーンの脱着ができるように位置が決められていて、どうしても外からチェーンを掛けることは不可能と思われました。そのとき私にある考えが閃きました。
車の工具箱からドライバーを取り出して来て、ドア枠にチェーン金具を固定している木ねじを外しにかかりました。ところがこれがなかなか外れないのです。すぐに鑑識の応援を要請し調べてもらったところ、なんとチェーン金具と木ねじは接着剤でドア枠に固定されていたのです。そうです。犯人はチェーンを掛けた状態でチェーン金具を接着剤でドア枠に固定したのです。
やり方はこうです。まずドア枠から金具を外し、木ねじの穴を少し広くしておきます。次いで木ねじが金具から落ちないように少量の接着剤で木ねじを金具に固定します。最後に木ねじの穴に接着剤を入れ、鎖受座にチェーンを掛けた状態で外からチェーン金具を固定します。(自宅のドアチェーンでもテストしてみましたが比較的容易に出来ました。)
↓続く
Yossy 2005/02/11 20:35
秘書は東京に向けて出発する前まで一緒にいた自分が、真っ先に疑われることは承知していたでしょう。
ですから自分には犯行が不可能だと思わせる状況を作り出す必要があったのです。
つまり私たち警察に、たとえ玄関の合い鍵を持っていても玄関からの侵入、逃走は不可能であり、犯人は庭から侵入し逃走したのだと思わせるために、ドアチェーンを掛ける必要があったのです。
ではどうやってドアチェーンを掛けたのでしょうか。
ここで私が真っ先に思い浮かべたのは「本当にドアにチェーンが掛かっていたのか?」ということです。もし「ドアにチェーンが掛かっていた」という証言が虚偽であれば、最初に駆けつけた我が署員が共犯ということになります。しかしこの署員が共犯であるためには、「自分が必ず最初に一人で現場に行くことになる」ことを知っている必要があります。現場への急行を命じたのは私ですから、そんなことがあるとは思えませんでしたが、一応その署員と被害者、秘書に何らかの関係があるか否かを調査した結果、幸い何の関係もないことが立証されました。
ここでもう一度犯人の行動を振り返ってみました。
まず書斎で被害者を殺害。サッシのガラスを割り、庭に降りて足跡をつけ、犯人が崖から来たように偽装。
玄関から出て何らかの方法で外からドアチェーンを掛け、合い鍵で施錠する。・・・・このとき何か漠然とした違和感が頭をよぎりましたがすぐに消えてしまいました。
「やはりどうやって外からドアチェーンを掛けるかがポイントだな。」と思いました。
私は現場に戻り、もう一度ドアチェーンをよくよく観察してみました。チェーンは切断されていましたが長さは20センチ弱。チェーンを掛けた状態で開くドアは15センチ程度と思われました。普通のドアチェーンで、ドア枠に鎖が付いたチェーン金具が取り付けられ、ドアには鎖受座が取り付けられています。ドアを閉めた状態のときのみチェーンの脱着ができるように位置が決められていて、どうしても外からチェーンを掛けることは不可能と思われました。そのとき私にある考えが閃きました。
車の工具箱からドライバーを取り出して来て、ドア枠にチェーン金具を固定している木ねじを外しにかかりました。ところがこれがなかなか外れないのです。すぐに鑑識の応援を要請し調べてもらったところ、なんとチェーン金具と木ねじは接着剤でドア枠に固定されていたのです。そうです。犯人はチェーンを掛けた状態でチェーン金具を接着剤でドア枠に固定したのです。
やり方はこうです。まずドア枠から金具を外し、木ねじの穴を少し広くしておきます。次いで木ねじが金具から落ちないように少量の接着剤で木ねじを金具に固定します。最後に木ねじの穴に接着剤を入れ、鎖受座にチェーンを掛けた状態で外からチェーン金具を固定します。(自宅のドアチェーンでもテストしてみましたが比較的容易に出来ました。)
↓続く