ｸｲｽﾞ大陸

隣のクラスに海外からの転校生が来たというので、一時間目が終わった休み時間、私は気乗りしなさそうな沙緒子を無理に誘ってB組に行ってみた。
そこでは予想通り、クラスの何人かがその子を取り囲んで、まるでマンガか学園ドラマのように興味本位の質問を矢継ぎ早に浴びせかけていた。
「ねえ、来栖さんはイギリスにいたんですって？」
「イギリスはどんなところ？　二階建てバスとか走っているんでしょう？」
「午後にはやっぱり紅茶を飲むの？」
「趣味は何？」
長い黒髪に白い肌の映える、美しいその転校生は微笑みながらひとつひとつ答えていた。
「二階建てバス・・・double-deckerのことね。走ってるけど私はそんなには使わなかったわ。subwayが好きで、よくone-wayの切符を買っては予定も決めずに出掛けてみたりしてたかな」
「tea timeはあるわね。みんなでおしゃべりしたりしながら、ゆったりと時を過ごしたりして。美味しいcookieのstoreがあって、必ずそこで買ってたわ。chipsやcandyも好き」
「趣味は、movieかな。友達とamusement parkに行くのもいいわね・・・」
女生徒たちはみんな、話の内容はもちろん、彼女の流麗な発音にうっとりとしていた。
その時、私の肩越しに沙緒子が声をかけた。
「あなた、イギリスにいたって本当？　嘘をついてもそのうち分かっちゃうわよ」
私も生徒たちもびっくりしたが、転校生は意外にもにっこり笑ってこう言った。
「イギリスにいたのは本当よ。ちょっと試してみただけなの、ごめんなさい。私は来栖あずさ。あなたは・・・」
「A組の穂陸奥沙緒子よ。よろしく」
二人はお互いに自然と手を差し出しあって握手をした。
私はその間もポカンとそれを眺めていただけだった。


沙緒子は来栖さんの話のどこに疑問を感じたのでしょうか？