ｸｲｽﾞ大陸

「暗号クイズと　ダイイングメッセージものは
　同じジャンルとして扱われることも多いけど、
　本当は別々のものと考えるべきだと　僕は思うんだ。
　暗号クイズとは
　『言葉をわざと解読しにくい形に置き換える遊びである』
　と言えると思う。
　対して　ダイイングメッセージは、
　『犯人に消される恐れが無いなら、ズバリの言葉を残したい』
　という被害者の思いが含まれていなければオカシイんだ。
　この問題での僕の拘りだよ。」
「そこはあんまり考えなくても解けるけどね。」

「流血して死をも予感した内田は、ミステリ好きの帰国子女だけあって、
　手近にあるものを使って犯人をズバリ表現できることに気がついた。」
「いつのまに帰国子女？」

「そして、最初はその真ん中あたりを指差すように
　人差し指で触れた。すると触れられた部分に、手に付いていた血が残った。
　学校の倉庫にひとつだけ置かれたパソコンだから、
　触れる機会は、普段の内田なら無いんだろう。つまり、
　ダイイングメッセージとして　ソレを指し示したのだということは
　警察が調べれば判るはずだ。・・・と当初は思ったんだ。」
「そうなの？」
「うん。でも、これだと知識クイズの要素が強いから、辞書が要る。
　内田も、いったんメッセージを作って、少し落ち着いたんだろう、
　このままだと難しくて解読してもらえないかもしれないと
　気がついた。それに、
　自分が意識を失ったあとで犯人が引きかえしてきたら、
　壁や床にも同じような痕跡をたくさん作って偽装するかもしれない。
　もっとハッキリ伝えなきゃダメだ、と考えた。」

「それで　バツとマルを書き加えたのね。」
「そう。しかも　マルの数をいくつにしようか、ちょっと迷って、
　結局は　より解りやすい数にしたんだ。
　暗号は複数の解釈が可能な場合があるから
　間違って伝わるおそれもあるけど、
　これだけ複数の意味を重ねておけば　きっと
　誰か解ってくれるだろうな、と内田は満足したと思うよ。」