渡りたい男 ≫No. 1
空蝉
2012/06/12 13:45
X氏は困り果てていた。
100m先の対岸に、本土が見える。
X氏が今いるのは小さな島。周りには深く、青い海が広がっている。
島には、辛うじて椰子の木が一本だけ立っているほかは、なにもないと言っていい。
なんとか向こうに渡りたいのだが、いかんせん、X氏は泳げないし、本土への連絡手段も持たない。
X氏が途方に暮れているところに、島の妖精が現れ、X氏の落胆を嘲るような、意地汚い口調で言った。
「あんた、向こう岸に渡りたいらしいな。だったら俺が手伝ってやらんこともない。以下の物から好きなのを選んで、目標の糧としてくれ」
@モーターボート
備考:60m進んだ所で沈没する
A潜水艦
備考:50m進んだ所で爆発する
Bマント
備考:40m飛んだところで落下する
C浮き輪
備考:30m〜10m進んだところで空気が抜ける
D拳銃
備考:弾が一発込められている。絶望を悟ったときに、自分のこめかみに当てて、引き金を引けば、いかなる悩みもたちまちのうちに蒸散するだろう。
なお、この銃は消音処理が施されているため、拳銃の音で本土の人間に自分の存在を知らせる、なんてことは不可能だ。
「なんという意地悪な妖精だろう!いや、むしろ悪魔と言っていい。どれも距離が足らんじゃないか!」
憤慨するX氏だが、その怒りを弄ぶかのように、妖精は得意げな顔で言った。「いやいや、俺はあくまでも妖精さ」
「貴様ぁっ!」
だが結局、X氏は本土に渡ることが出来た。
どうやったのだろう?
※本土の人間に助けを求めることは不可能。また、たまたま通りかかった船などに発見された、などということもない。また、X氏は拳銃で自殺し、霊体となり、本土に向けて浮遊して辿り着いた、というオチもないものとする
100m先の対岸に、本土が見える。
X氏が今いるのは小さな島。周りには深く、青い海が広がっている。
島には、辛うじて椰子の木が一本だけ立っているほかは、なにもないと言っていい。
なんとか向こうに渡りたいのだが、いかんせん、X氏は泳げないし、本土への連絡手段も持たない。
X氏が途方に暮れているところに、島の妖精が現れ、X氏の落胆を嘲るような、意地汚い口調で言った。
「あんた、向こう岸に渡りたいらしいな。だったら俺が手伝ってやらんこともない。以下の物から好きなのを選んで、目標の糧としてくれ」
@モーターボート
備考:60m進んだ所で沈没する
A潜水艦
備考:50m進んだ所で爆発する
Bマント
備考:40m飛んだところで落下する
C浮き輪
備考:30m〜10m進んだところで空気が抜ける
D拳銃
備考:弾が一発込められている。絶望を悟ったときに、自分のこめかみに当てて、引き金を引けば、いかなる悩みもたちまちのうちに蒸散するだろう。
なお、この銃は消音処理が施されているため、拳銃の音で本土の人間に自分の存在を知らせる、なんてことは不可能だ。
「なんという意地悪な妖精だろう!いや、むしろ悪魔と言っていい。どれも距離が足らんじゃないか!」
憤慨するX氏だが、その怒りを弄ぶかのように、妖精は得意げな顔で言った。「いやいや、俺はあくまでも妖精さ」
「貴様ぁっ!」
だが結局、X氏は本土に渡ることが出来た。
どうやったのだろう?
※本土の人間に助けを求めることは不可能。また、たまたま通りかかった船などに発見された、などということもない。また、X氏は拳銃で自殺し、霊体となり、本土に向けて浮遊して辿り着いた、というオチもないものとする