クイズ大陸



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殺人推理でディナーはおあずけ ≫No. 1
? 2012/04/06 12:56囁き
田舎の地にそぐわない洒落た洋館外観
そこに男女合わせて五人の高校生が一台の車から降りてくる。
ここは人里離れた場所に建つとあるペンション。
今日から二日間、ここで大陸高校ミステリ同好会の夏期合宿がおこなわれるのである。
合宿と銘打っても蓋を開ければただの旅行というのは暗黙の了解というところか。

数分遅れて車から降りてきたのはここまでの運転手兼この同好会顧問の大風 旋清先生。
先生ご自慢のエスティマハイブリッド。
おかげで車酔いしやすい私も酔うことなくここまでたどり着けた。
ちなみに私は馬路 緋色。
大陸高校には今年の春に入学し同好会へも最近入会したばかりの美少女だ。
そして他のメンバーは私の親友、牧 真紀。
少し変わり者の秀才という言葉がピッタリな彼女。
そして私の憧れの美女、須江 博子先輩。
ちょっとイケメン、貫田 空。
残る一人は五音 京先輩、この人がこの同好会の会長だ。凄く頭がキレる人だけど、真面目過ぎがたまに傷。

ダンディーな風貌のペンションのオーナーの挨拶の後、
とりあえず荷物を各部屋へ運んでからダイニングへ集合という大風先生の指示。
私もそれに従いみんなの待つダイニングへと向かう。
「 大風先生、ここ携帯の電波がバンバンですよ。人気のミステリ小説だと携帯電波は繋がらない事が定番でありそこが一番味のある部分ですよね。リサーチ不足ですよ先生。」
そこでは先に来ていた須江先輩が冗談めかして大風先生をからかっていた。
「 ははは…その辺は勘弁願いたい。
だがそれ以外の文明機器はこのペンションには無いぞ。
パソコンも無ければテレビも無い、エアコンの効きも悪い。
…どうだ、なかなかに雰囲気あるだろう?」
大風先生は得意顔で長い足を組み替えている。
それって宿泊費を浮かせた結果でしょうが。
そんなやりとりをしているとどうやら全員揃ったようだ。
それに合わせて大風先生がこほんと小さく咳払い。
「 さて。文化祭まであと一ヶ月。我々は毎年恒例となった推理劇を今年も演じる事に決まったぞ。」
「 その件ですが、既に台本を牧が作成してくれています。」
牧は会長にうながされ、手にしていたA4サイズのコピー用紙に印刷された台本を大風先生に手渡した。
「 ははは…これはなかなか面白い。」
「 面白い?笑える話ではないはずですが。おっと、ちょっと失礼。」
そう断りを入れた牧は大風先生の手にした台本の一枚目に胸ポケットから取りだしたマジックペンで
“殺人推理でディナーはおあずけ”とタイトルを書き足した。
「 では、大風先生。これを人数分コピーして来ていただけます?」
牧はにっこり微笑む。
「 何?人数分の台本を準備しているんじゃ無いのか?
このペンションには文明機器は一切置いていないといっただろう。
しかもこの辺りには店もなければ民間もない、コピーしに行くだけで一苦労なんだぞ!?」
焦る先生の表情を横目にニヤリと笑う仕掛人の真紀。なるほど…やるなあ、真紀ったら。
「 そうなんですかあ。ラッキー♪じゃあ先生が帰って来るまで自由時間ですね。
ねえ皆さんトランプしませんかあ?」
これはチャンスと隠し持っていたトランプを取り出す私。

「 おいおい、緋色君。今日は我々は何のためにここに来たと思ってるんだ。」
そんな言葉を返してきたのは真面目人間、会長だ。…チッ!!
そのタイミングで壁に掛かっていた振り子時計がボーンボーン…と六回続けて鳴り響いた。
「 六時…七時からディナーだったわよね。
先生がお帰りになるのを待って練習を始めると中途半端な時間になりそう。
練習はその後にした方が良いかもしれないわね。」
さすがの会長も須江先輩には逆らえないらしく渋々ながらも私が配ったトランプを手にした。

そんなやりとりの中、大風先生は諦めたようにわざとらしいため息を残し、台本の原本を手にして玄関から出ていったようだ。

「 先生も居なくなったし、トランプの勝敗に何をかけます?。」
待ってましたとばかりにイケメン男、貫田が張りきりだす。
ペンションのオーナーがメンバーにコーヒーをいれてくれていた。
いつものインスタントとは違いいい香りが部屋に充満している。…うん、おいしい。
オーナーは大風先生の姿が見えない理由を会長から聞く。
「 そうでしたか。それならばここから一番近いコピー機を設置してある所は、車で片道二十分程度のコンビニです。
寄り道されなければ夕食の時間には間に合いそうですね。」
オーナーは安心した顔で最後に私の前にコーヒーを出し終えて厨房へと戻って行った。
フワァ〜…なんだか眠たくなってきた………。

続く >>1
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