クイズ大陸



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『コマ―』と鳥川の事件簿#41≫ No.1 ≫No. 2
?駒一 2012/02/05 12:15
四六時中、クイズしか頭にないのかも。一二三さん。ふと横を見るとポケットからまだ、ゴミを取り出している。
だんだんとベンチの上に積み上がっていくゴミのタワーが目立ってきたため、
少し距離をおいて他人のふりをしながら警察署の方を向いていると、その建物の中から綾香が飛び出してきた。
なぜか薄く化粧までしている。
これから重役の人とでも待ち合わせがあるのかな。案外、僕が待たされた理由もそんなものかもしれない。
とりあえずお世辞。
なぜだかわからないけど母から化粧している人は褒めろと脅迫されたことを思い出したからだ。
「お化粧してなくても美人だけど、化粧しているともっと綺麗だね」
「ふぇ、ビ、美人!? というかもっと綺麗ってアワワワワワ!!」
またなんか赤く爆発している。やっぱ風邪なのかね? こいつ。
「ああ、ほらほら! あったよ鳥川君! これが目に入らぬか―ってね!」
「ひ、一二三警部!?」
綾香が目を丸くして僕の後ろでたぶん、何かを印籠のように見せつけているであろう一二三さんに驚く。
いやいや、えーっと……?
身体をゆっくりと半回転させて一二三さんの方へと向きなおす。
一二三警部ってことはもしかして・・・・・・。
振り返った先で一二三さんが見せつけていたものは、
まぎれもない一二三さんの顔写真の入った警察手帳だった。



「いつから警部になんてなってたんですか!」
その質問に逃げるように一二三さんは「ああ、忙しい忙しい」とベンチに積まれたゴミの山をポケットに入れ直していく。
その行動に若干のため息をつくと、すぐ隣にいた綾香が説明を加えてくれた。
「ここだけの話なんですけど……なんでも、警察庁の上層部が異例の新人とか言って現れたんです、一二三さん。
 あと、なぜかいくら仕事でミスしても、何もペナルティーがでなかったり……」
その説明に、幼かったころに何度も見たあの大きな友人帳を思い出す。
たしかあの友人帳には、人には知られたくない弱みばかり載っていたっけ……。
あれで脅迫交渉したのか、一二三さん。一体何のためにか気にはなったが、とりあえずその疑問は放置する。
また、楽しそうだからとかそういう理由だろう。たぶん、この人の場合。
まだ首をかしげている綾香に曖昧に返事を返していると、
ついに中身をすべて戻し終えたのか一二三さんが僕らの方へと振り返った。
「とりあえず鳥川君、この際だから僕も君の仲直り作戦に参加しよう。ほら、行くよ―」
それだけ言ってさっさかと背中を向けて歩いていく。ちょっと待ってください! どこ行く気ですか!
鼻歌を歌いながらぐんぐん進んでいく。聞こえているのは分かってるんだから待ってってば!
「それじゃあ、鳥川さん。私はこれで……」
「あー待って待って!」
この状況から逃げ出そうと警察署へ歩き出していた綾香の左手首を掴む。
綾香だけ僕に一二三さんを押しつけて立ち去るなんてずるいぞ!
「ひゃ! あ、あの、ななな、なんでしょうか!」
「しばらく付き合ってくれ!」
この一二三さんと僕の二人だけで行動するなんて精神的に参るんだってば!
「つつつつ、付き合って!? そ、そんな、ま、まだ心の準備がぁ!」
「君しかいないんだ!」
この状況でなんとか一二三さんの行動を止められそうな人は!
「え、あ、あわわわ、ワ、ワ、ワ、私なんかで、よければ、どど、ど、どうぞ、末永くよろし……」
とりあえずそのまま綾香の左手を掴んで一二三さんの歩いている場所まで駆けだしていく。
まだ、何か顔を真っ赤にして僕の右手を握りしめる綾香。
やっぱり熱でもあるのかねえ。もしかしたらやっぱり、休んだ方がよかったのかもしれない。
「無理ならいいよ? 突然だし仕方ないから」それに、風邪をひいているようだし。
「だ、大丈夫です! わ、ワタシ! むしろ、嬉しいくらいですから!」
風邪をひいて嬉しい? うーん、女心って理解できない……。
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