愛する君へ ≫No. 1
木有恵尊
2011/08/19 12:03
「ねえ、あなたもどう?」机に置いてある遺影に向かって、高木秋は話し掛けた。「……喋るはず、無いか」
缶に残っているビールを一気に飲み干す。「お酒は駄目だよ、身体に良くないから」と高木順平はよく注意してきたが、彼が亡くなった今、アルコールを身体に入れないとやっていけなかった。
高木順平は丁度一年前に、交通事故でこの世を去った。もし、他人が起こした事故で、愛する夫が死んだのであれば、高木秋はその人物をいつまでも恨むつもりでいたが、事故を起こしたのは高木順平本人なので、恨む相手がいなかった。強いて言えば、先に逝ってしまった高木順平を恨むべきだろうか。
「約束したじゃん、死ぬ時は二人で死のう、って」高木秋は机に突っ伏する。「約束したじゃん」
愚痴を零していると、瞼が重くなってきた。そのまま深い眠りにつく。
携帯電話の音で、目が覚めた。頭が重い。酷い二日酔いのようだ。
高木秋は頭を押さえながら、携帯電話を取る。一件のメールが来ていた。
『さきおみにあけおえなくさけても ぼさおくはきけみおをけあさいしおけてさる けじおさゅんおぺい』
「……何これ、新手の詐欺?」
ちらっ、と遺影を見る。心なしか、高木順平が笑っているような気がした。
もう一度メールを見る。
「これ、どういう意味だろう?」
木有恵尊 2011/08/19 12:03
缶に残っているビールを一気に飲み干す。「お酒は駄目だよ、身体に良くないから」と高木順平はよく注意してきたが、彼が亡くなった今、アルコールを身体に入れないとやっていけなかった。
高木順平は丁度一年前に、交通事故でこの世を去った。もし、他人が起こした事故で、愛する夫が死んだのであれば、高木秋はその人物をいつまでも恨むつもりでいたが、事故を起こしたのは高木順平本人なので、恨む相手がいなかった。強いて言えば、先に逝ってしまった高木順平を恨むべきだろうか。
「約束したじゃん、死ぬ時は二人で死のう、って」高木秋は机に突っ伏する。「約束したじゃん」
愚痴を零していると、瞼が重くなってきた。そのまま深い眠りにつく。
携帯電話の音で、目が覚めた。頭が重い。酷い二日酔いのようだ。
高木秋は頭を押さえながら、携帯電話を取る。一件のメールが来ていた。
『さきおみにあけおえなくさけても ぼさおくはきけみおをけあさいしおけてさる けじおさゅんおぺい』
「……何これ、新手の詐欺?」
ちらっ、と遺影を見る。心なしか、高木順平が笑っているような気がした。
もう一度メールを見る。
「これ、どういう意味だろう?」