面白い関数(1) ≫No. 1
メーベ
2011/02/19 20:29
<tt>
注意
eを自然対数の底とする。exp{k(x)}はek(x)を意味する。
ln(x)はxの自然対数をとったもの,つまりeを底としたlogxである。
arctan(x)はtan(x)の逆関数で,全区間で定義され,値域は-π/2<arctan(x)<π/2,(d/dx)arctan(x)=1/(1+x2)である。
関数f(x)=exp{ln(x+1)+arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}の値を計算機を用いずに求めることは容易ではないが,おおよその値を知るだけであるならば,f(x)≒xとすることができる。
問1
f(x)≠0を示せ。
f(x)≒xとするのがどれほど正確であるかを調べよう。g(x)=|f(x)-x|/xをf(x)が定義されるすべてのx≠0に対して定義することができる。g(x)の意味するところは,絶対誤差のxに対する割合で,この値が小さいほど,相対誤差的観点からすれば正確である。また,問1の結果から,f(x)が定義されるすべてのxに対して,h(x)=|f(x)-x|/f(x)を定義することができる。こちらは,絶対誤差のf(x)に対する割合である。
問2
f(1)=1を示せ。
問2の結果から,g(1)=h(1)=0であるから,f(x)≒xという近似式はx=1においては完全な等式になる。
問3
lim[x→-1+0]f(x)を求め,それを用いてlim[x→-1+0]g(x),lim[x→-1+0]h(x)を求めよ。
問3から,x→-1+0の時,f(x)≒xという近似式は相対誤差の観点からすれば,まったく正確でないことがわかる。次に,絶対誤差的な観点から考えてみよう。i(x)=|f(x)-x|を定義しよう。
問4
-1<x<1に対して,i(x)<2を示せ。
問4の不等式は,(-1,1)では相対誤差は大きくなっても,絶対誤差は2未満であることを意味している。では再び,相対誤差の観点に戻ろう。次にx>1の区間について考える。
問5
1<xがに対して,g(x)<0.1,h(x)<0.1,つまり,xから見たf(x)のずれ,f(x)から見たxのずれはともに10%未満であることを示せ。更に,h(x)<g(x)を示せ。
問5で示したようにx>1の区間においては,相対誤差は10%未満であり,近似式f(x)≒xはまずまずの精度を持っている。xが大きい区間では,たとえ絶対誤差が大きくても,相対誤差が小さければ大体の値を知るにはあまり問題ない。一方で,問4で示したように-1<x<1の区間では相対誤差は大きくなるが,絶対誤差は2未満と必ずしも小さくはないものの,まったくかけ離れた結果でもない。実際,これらのグラフ,つまりy=f(x)とy=xのグラフを広い区間で描いて重ねてみるとほとんど一致する。
補足1
厳密には解けない問題もあると思います。解答はどんな手段を使ってもらっても構いません。色んな関数があるんだなぁ,と楽しんでいただければ。
補足2
Excelにより最小二乗法を用いて近似曲線を求めると,y=1.0989x-0.0762と算出され,y=xとほぼ同じ結果が返ってくる。
補足3
f(x)=exp{ln(x+1)+arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}は変形すると,f(x)=exp{ln(x+1)}*exp{arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}=(x+1)exp{arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}である。ここで分子のexp{arctan(x)}を取り払って新しい関数F(x)とすると,F(x)=(x+1)/exp{ln(2)+arctan(1)}は傾き1/exp{ln(2)+arctan(1)},y切片が1/exp{ln(2)+arctan(1)}である直線となる。従って,F(x)にexp{arctan(x)}を掛けることは,特にxの大きい区間において,y切片が1/exp{ln(2)+arctan(1)}の直線からy切片が0の(ほぼ)直線に変える効果を持つ。ただし,同時に傾きも変わってしまう。
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メーベ 2011/02/19 20:29
注意
eを自然対数の底とする。exp{k(x)}はek(x)を意味する。
ln(x)はxの自然対数をとったもの,つまりeを底としたlogxである。
arctan(x)はtan(x)の逆関数で,全区間で定義され,値域は-π/2<arctan(x)<π/2,(d/dx)arctan(x)=1/(1+x2)である。
関数f(x)=exp{ln(x+1)+arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}の値を計算機を用いずに求めることは容易ではないが,おおよその値を知るだけであるならば,f(x)≒xとすることができる。
問1
f(x)≠0を示せ。
f(x)≒xとするのがどれほど正確であるかを調べよう。g(x)=|f(x)-x|/xをf(x)が定義されるすべてのx≠0に対して定義することができる。g(x)の意味するところは,絶対誤差のxに対する割合で,この値が小さいほど,相対誤差的観点からすれば正確である。また,問1の結果から,f(x)が定義されるすべてのxに対して,h(x)=|f(x)-x|/f(x)を定義することができる。こちらは,絶対誤差のf(x)に対する割合である。
問2
f(1)=1を示せ。
問2の結果から,g(1)=h(1)=0であるから,f(x)≒xという近似式はx=1においては完全な等式になる。
問3
lim[x→-1+0]f(x)を求め,それを用いてlim[x→-1+0]g(x),lim[x→-1+0]h(x)を求めよ。
問3から,x→-1+0の時,f(x)≒xという近似式は相対誤差の観点からすれば,まったく正確でないことがわかる。次に,絶対誤差的な観点から考えてみよう。i(x)=|f(x)-x|を定義しよう。
問4
-1<x<1に対して,i(x)<2を示せ。
問4の不等式は,(-1,1)では相対誤差は大きくなっても,絶対誤差は2未満であることを意味している。では再び,相対誤差の観点に戻ろう。次にx>1の区間について考える。
問5
1<xがに対して,g(x)<0.1,h(x)<0.1,つまり,xから見たf(x)のずれ,f(x)から見たxのずれはともに10%未満であることを示せ。更に,h(x)<g(x)を示せ。
問5で示したようにx>1の区間においては,相対誤差は10%未満であり,近似式f(x)≒xはまずまずの精度を持っている。xが大きい区間では,たとえ絶対誤差が大きくても,相対誤差が小さければ大体の値を知るにはあまり問題ない。一方で,問4で示したように-1<x<1の区間では相対誤差は大きくなるが,絶対誤差は2未満と必ずしも小さくはないものの,まったくかけ離れた結果でもない。実際,これらのグラフ,つまりy=f(x)とy=xのグラフを広い区間で描いて重ねてみるとほとんど一致する。
補足1
厳密には解けない問題もあると思います。解答はどんな手段を使ってもらっても構いません。色んな関数があるんだなぁ,と楽しんでいただければ。
補足2
Excelにより最小二乗法を用いて近似曲線を求めると,y=1.0989x-0.0762と算出され,y=xとほぼ同じ結果が返ってくる。
補足3
f(x)=exp{ln(x+1)+arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}は変形すると,f(x)=exp{ln(x+1)}*exp{arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}=(x+1)exp{arctan(x)}/exp{ln(2)+arctan(1)}である。ここで分子のexp{arctan(x)}を取り払って新しい関数F(x)とすると,F(x)=(x+1)/exp{ln(2)+arctan(1)}は傾き1/exp{ln(2)+arctan(1)},y切片が1/exp{ln(2)+arctan(1)}である直線となる。従って,F(x)にexp{arctan(x)}を掛けることは,特にxの大きい区間において,y切片が1/exp{ln(2)+arctan(1)}の直線からy切片が0の(ほぼ)直線に変える効果を持つ。ただし,同時に傾きも変わってしまう。
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