一度は「期待値は求められない」、と結論付けたのですが、ボムボムさんに指摘された後、もう一度よーく考え直した結果、「期待値は求められる」という結論に至りました
以前にも触れましたが、もともとの方針は「n回のうちA君がk回当たる確率をP(n,k)とおき、E=Σ[k=0~n]k*P(n,k) を計算する」というものでした。ですが、これでやるとどうしてもP(n,k)が複雑になってしまい行き詰ります。
ではいったいどう解くのか。・・・じつはこちらもただの「
連立漸化式」で処理できてしまうのです
さてさて、それでは解答を・・・。
(3*3の場合について考える)
対称性より、生徒を次のように二種類に分類して考えることが出来る。
C B C
B☆B
C B C
(☆はA君の位置)
一人目にあたった生徒がXグループの生徒で、(n+1)人あてたときの、A君が当たる回数の期待値をX
nとおく。(X=B,C)
このとき
B
1=1/4 B
2=5/16 B
3=29/64
C
1=0 B
2=1/6 C
3=7/32
まずB
n+1をB
nやC
nなどを用いて表すことを考える。
1回目の移動によって場合分けをする。
(ア)B→B
2回目〜(n+1)回目までの移動によるA君の当たる回数の期待値はB
n、1回目までにA君の当たる回数の期待値は0に等しい。またB→Bの確率は1/4。
よって1/4 B
n(イ)B→C
2回目〜(n+1)回目までの移動によるA君の当たる回数の期待値はC
n、1回目までにA君の当たる回数の期待値は0に等しい。またB→Cの確率は1/2。
よって1/2 C
n(ウ)B→A→B
3回目〜(n+1)回目までの移動によるA君の当たる回数の期待値はB
n-1、2回目までにA君の当たる回数の期待値は1に等しい。またB→A→Bの確率は1/4。
よって1/4 (B
n-1 + 1)
(ア)〜(ウ)より
B
n+1 = 1/4 B
n + 1/4 (B
n-1 + 1) + 1/2 C
n (n≧2)
同様に考えることで
C
n+1 = 1/2 B
n + 1/2 C
n (n≧1)
∴B
n = 2 C
n+1 - C
n (n≧1)
上式に代入して整理すると
8 C
n+2 - 6 C
n+1 - 3 C
n + C
n-1 - 1 = 0 (n≧2)
⇔(8 C
n+2 + 2 C
n+1 - C
n) = (8 C
n+1 + 2 C
n - C
n-1) + 1 (n≧2)
⇔8 C
n+2 + 2 C
n+1 - C
n = n + 1 (n≧2)
n=1のときも成立するので
8 C
n+2 + 2 C
n+1 - C
n = n + 1 (n≧1)
C
n = D
n + (n - 1)/9 とおくと
8 D
n+2 + 2 D
n+1 - D
n = 0 (n≧1)
D
1=0,D
2=1/72とあわせてこの漸化式を解くと
D
n = 2/27 (1/4)^n + 1/27 (-1/2)^n (n≧1)
∴C
n = (n - 1)/9 + 2/27 (1/4)^n + 1/27 (-1/2)^n (n≧1)
B
n = 2 C
n+1 - C
n (n≧1)に代入して整理すると
B
n = (n + 1)/9 - 1/27 (1/4)^n - 2/27 (-1/2)^n (n≧1)
以上より、求める期待値E
n = 1/2 (B
n + C
n)は
E
n = n/9 + 2/27 (1/4)^(n-1) + 1/27 (-1/2)^(n-1) (n≧1)
ところで
lim[n→∞]E
n/n = 1/9
より、あてる人数を増やしていくにつれて1/9に近づいていくことがわかる。
・・・思っていたよりずいぶん期待値の式が綺麗で驚きました
漸化式はちょっとだけ複雑でしたので、一応解説をつけて置きました
連立漸化式の解き方はいくつもありますが、おそらくこの方法が一番計算が楽・・・なはず。
ところで、4*4の場合はどうなるのでしょう?実は、こちらは4つの数列による連立漸化式になってしまい、とても解く気が出ません(;o;)実際の教室はもっと広いですが、手計算では3*3が精一杯です(-へ-;)
CBCD
BABC
CBCD
DCDE
さらにさらに補足。この考え方、実は他の問題でも応用できます。よくある問題でいえば「正四面体を転がす」とか。大学入試の問題では確率を求めさせる場合しか見たことがありませんが、この方法だと期待値も求められてしまうのです
ケンスー 2012/10/06 01:31
この問題のキーワードは、ズバリ「連立漸化式」です
さて、それでは解答を・・・。
(1)
対称性より、生徒を次のように二種類に分類して考えることが出来る。
☆C
C B
(☆はA君の位置)
生徒のグループ名を用いて、(n+1)人目までに一度もA君が当たらず、かつ(n+1)人目に当たる人がXグループである確率をXnとおく。
このとき
B0=1/3
C0=2/3
また
Bn+1=1/2 Cn
Cn+1=Bn
これらを用いて連立漸化式を解くと
Bn=(1/6){(1+√2)(√2/2)^n - (√2-1)(-√2/2)^n}
Cn=(√2/6){(1+√2)(√2/2)^n + (√2-1)(-√2/2)^n}
よって求める確率は
Bn+Cn=(3+2√2/6)(√2/2)^n + (3-2√2/6)(-√2/2)^n
4人あてる場合はn=3を代入すればよい。
(2)
対称性より、生徒を次のように二種類に分類して考えることが出来る。
C B C
B☆B
C B C
(☆はA君の位置)
生徒のグループ名を用いて、(n+1)人目までに一度もA君が当たらず、かつ(n+1)人目に当たる人がXグループである確率をXnとおく。
このとき
B0=1/2
C0=1/2
また、上図より
Bn+1=1/4 Bn + 1/2 Cn
Cn+1=1/2 Bn + 1/2 Cn
求める確率はBn+Cnによって与えられる。連立漸化式を解くと
Bn+Cn={(5+√17)(3+√17/8)^n - (5-√17)(3-√17/8)^n}/2√17
16人あてる場合はn=15を代入すればよい。
(2)の16人の場合は、n=15を代入すれば求まるには求まりますが、かなり面倒です。問題作成時、エクセルによって計算の確認をしていたので、手計算の場合を全く考えていませんでした(;v;)
この問題、実はモデルになった先生が実際にいます。わが恩師であるその先生は、ストップウォッチを適当に止めたときの下一桁を使って、八方向にランダム移動をする、という当て方をしていました。
でも、この当て方って本当に均等なのかなあ・・・と思い、とりあえず四方向verで考えてみよう、となったのがこの問題の始まりです。ただ、期待値が予想以上に難しく、この問題の(1)・(2)を解く限りでは、本当に均等なの?という感じです・・・(-へ-;)
・・・・・・これでおわっちゃ面白くないですよね。ということで、問題にはありませんが、続いて期待値を考えてみましょう