クイズ大陸



履歴 検索 最新 出題

倉庫に消えた凶器 ≫No. 1
?かえるの妻 2010/10/09 01:49囁き
 「にじいろ米菓本舗」本社工場は、いつになく騒然としていた。
 工場長は取り急ぎ、社員食堂の片隅を事件対策本部とし、
 事情を知っていそうな従業員を ひとりずつ呼んで話を聞いた。
 以下が その証言である。


白井(総務室長)
「従業員たちですか? 皆、我が社の商品を誇りに思っていますよ。
 欠勤も遅刻も 最近は全くありません。いたってマジメな勤務態度です。
 我が社の不利益になることをする者なんて 居るはずがない。

 従業員同士は皆 家族のような付き合いで 全員が互いに顔見知りですから
 例えば 部外者が社員に成り済まして何か盗み出す、なんてことはムリです。
 そういう意味では、仲が良くて結構なんですが。 しかし、
 こんな騒ぎになるのでは、今後は社内恋愛は禁止すべきですね。」


青島(出荷担当)
「金田ケンと 藤沢ユカなら、よく倉庫でイチャついてたっス。
 あそこなら防犯カメラも無いから見つからないだろうってんで、好き放題っス。
 みんな知ってて 気を利かしてたっス。本人たちはバレてないと思ってるっス。
 それと、最近じゃ金田が 桃園ルミとも親密になってたんで、
 あのフタマタ野郎、いつか痛い目みるぞって、みんな言ってたっス。

 事件のとき、自分は赤座たちと一緒に広場に居たっス。金田の大声がした後、
 藤沢が 課長とぶつかって、何か話したみたいっスけど、聞こえなかったっス。
 そのあとすぐ藤沢は正門のほうへ走っていって、見えなくなったっス。
 あれ、午後サボりか、カバンも何も持たずに帰るんかな、って思ったっス。」


桃園(事務員)
「ケンくん? うん、時々 ふたりっきりで会ってたのー。
 今朝もねー、いつもみたいにギュッてしてくれたのー。えへ。
 そのときねー、ケンくんの襟に、ルミの口紅が付いちゃってー。
 ケンくん いつ気がつくかなーって、思ってたのー。えへ。」


水谷(副工場長)
「一部の従業員が 休憩時間にも倉庫に来て寛いでいたことは
 承知してましたが、立ち入りを厳しく制限する必要は感じません。
 飲食禁止、私物持ち込み禁止といったルールは守られていましたから。

 第二倉庫は 昼の休憩時間の中頃に 私が鍵を開け、
 夕方の終業時に 異常のないことを確認し施錠することになっています。
 昨日も今日も、予定どおりに実行しました。緑山くんが立ち会ってます。

 昨日から今日にかけて、第二倉庫内にあったのは、梱包済みの
 『わけあり煎餅たっぷり徳用パック』だけです。
 昨日のうちに 数量を確認のうえ、造り付けの棚に並べてありました。
 事件のあとで急ぎ確認しましたが、商品が動かされた形跡はありません。
 倉庫内の変化といえば 棚から離れた床の 僅かな血痕だけで、
 それが出荷に影響するとは 私には思えないのですが、
 緑山くんが妙に興奮していますので、再度 施錠しておきました。」


紺野(仕入れ担当)
「第二倉庫の出入り口なら1ヶ所しかないし、倉庫前の広場から よく見えるでしょ。
 倉庫の前に、出入り口に背を向ける形で、ベンチが据えてあるでしょ。
 緑山課長が そのベンチで弁当を食べたりしてたよ。
 水谷副長も普段どおり鍵を持って巡回してた。仲間も皆 見てたはずだよ。

 俺、マメに時計を確認するクセがあるから覚えてるよ。
 副長が解錠しに来たのが ちょうど12時30分。藤沢が倉庫に入ったのが35分。
 金田が来たのが46分で、ただならぬ叫び声がしたのは48分。
 緑山課長が慌てて立ち上がってさ。飛び出して来た藤沢と、正面衝突。」


緑山(製造課長)
「30分間ほど倉庫前で過ごしておりました。事件の関係者を見逃すはずがありません。
 事情を訊ねたところ藤沢は、商品で金田の頭部を殴ったと返答しました。
 驚きました。商品が心配で、あわてて倉庫に飛び込みました。

 あとから若い連中が来て、さらに副長も戻って来られました。
 商品損傷の可能性をお伝えし、徹底的に検品することを提案したんですが。
 それは却下され、副長は皆を追い出しました。 何故です?
 え、金田? 腹部を押さえて唸ってたようだが、人騒がせな野郎だ。
 あんな奴より商品が問題だろう!? 午後の出荷はどうするんだ!!!」


赤座(梱包担当)
「紺野と一緒に倉庫へ駆けつけた。金田が床の中央に倒れてて、
 課長は棚の商品を確かめてるみたいだった。
 金田はすぐに起き上がったんだが、頬と襟に血が点々と付いてた。
 僕は金田に手を貸して、一緒に倉庫から出た。副長と入れ違いだった。

 事務所で救急箱を借りて、僕が手当てしてやった。
 男同士じゃ楽しくもないが、あの傷じゃ自分では やりにくいだろうから。
 意外に深い傷だから医者に行ったらどうか、と言ってやったら
 金田は頷いて、事務所を出てった。あとは知らない。」

・・・

黄河(工場長)
「さて。 ひとまず現状は判ったが・・・。
 一番の問題は、藤沢が金田を殴るのに使ったという商品、つまり凶器のことだ。
 ケースに凹みや血痕のある商品を出荷したとあっては、社の信用に関わる。
 出血するほど殴ったなら、仮にケースが無事でも 中身が粉々だろう。
 『わけあり徳用』とは言っても 限度がある。粉々なら不良品だ。

 大量の商品のうち どれが凶器として使われたのかを知るために
 当事者ふたりに事情を聞きたいところだが、行方がわからん。
 やむを得ん。今回の出荷は諦めて 第二倉庫内の検品のやりなおしを・・・」


黒岩(食堂のおばちゃん)
「まあ親分さん、落ち着きなさいな。
 アタシも同じ証言を聞いてましたけど、検品の必要は無いと思いますよ。
 心配なら、あの人に もういちど、ひとつ質問なさい。それで解決ですよ。」


 問題
 おばちゃんは 誰に何を訊ねるべき と考えているのでしょう?
 この事件の真相は?  推理は囁きでお願いします。
編集