「お兄ちゃん、もういいよ…私を降ろして…」「何言ってるんだ!もうすぐ、もうすぐ帰れるからな…!」
…日の光さえ届かぬような、深くて暗い森の中。3日3晩さまよったボクらの命は、風前の灯だった。
ボクの名前は、ヘンゼル。一緒にいるのは、妹のグレーテルだ。
ボクと妹、父と母と、4人で森の外れの一軒家で暮らしていた。
家は貧しく、母は意地悪だけど、父はボク達を庇ってくれたし、妹と力を合わせて、なんとか日々を送っていた。
ある日。昼ごろになって、父が急に「森へピクニックに行こうか」と言い出した。
見え透いた嘘だ。父の魂胆は分かっている。いや、父ではない、背後にいる母親の魂胆だ。
母はいつも「産まなきゃよかった」が口ぐせで、ボクや妹に暴力をふるっていた。
ボクが妹を庇うと、より酷い仕打ちを奮うのだ。
…ここ最近の飢饉で、口減らしに子供を捨てる親も増えている。
「森の魔女が子供たちをさらっていく」
「魔女の家はお菓子の家で、子供たちは勝手に家出して、そこで平和に暮らしている」
大人たちの、勝手な言い訳だ。本当のことは、ある程度大きな子供は分かっている。
(グレーテルは信じているみたいだが)
とうとう、ボクたちもその対象となったわけだ。
…ずいぶん、狭い道を通るな。前に森に来た時は、もっと通りやすかったけど…
まあ、簡単に捨てられるつもりはない。森へ入る途中途中に、お昼ごはん用のパンをちぎって撒いてきた。
これを辿れば、家に帰るのは難しくはない。
…はずだった。父が「薪を取ってくる」と言って立ち去った後、こっそり後をつけたところまでは良かった。
見失わないように必死で追いかけたが、森に慣れた父親の足には敵わない。
結局、途中で撒かれてしまった。目印のパンを探してみると…
まったく、見当たらない!鳥に食べられてしまったのか?
こんなことなら、河原で白い石でも拾っておくべきだった。
それから、3日3晩。同じ所をグルグル回っているような気がする。
空腹も限界だ。こんなことなら、あのパン、食べときゃよかった…
とうとう、空腹に耐えかねて、そこらに生えてるキノコや木の実に手を出してしまった。
…これがまたいけなかった。眩暈はするし、吐き気もする。
グレーテルは、もうまったく立てなくなってしまった。
目が霞む…もう、どこを進んでいるのかもわからない。
足に草や枝が絡みつく。獣道ではなく、道なき道を進んでいるようだ。
…もう、痛みの感覚すらない。だんだん、どうでもよくなってきた。
世界がぐにゃぐにゃ歪み始める。…ああ、もう、死んじゃうのかな?
…突然、視界が開けた。月夜に、家が照らされている。あれは…?
「あ…お兄ちゃん…えへへ、お菓子の家だぁ…♪」
お菓子の家?妹を降ろして、霞む目をこすって良く見てみる。
ぼんやりとした視界に映ったのは、お菓子やレープクーヘン(ジンジャーブレッド)でかたどられた、お菓子の家だった。
「えへへ…クッキーに、ビスケット。花壇にはタルトもあるや。地面はガトーショコラだし…わぁ、よだれが出てきたぁ」
グレーテルは、呆けた顔をしながら、家に近づいていく。
ふと、家の中から肉を焼くようないい香りがしてきた。「うわぁ…お菓子も良いけど、ごちそう、食べたいなぁ…」
グレーテルは、無防備に家の中に入って行こうとする。
「待て…!ここがお菓子の家なら、魔女が…!」 慌てて、妹を追いかける。
家の中に入ると、そこには…
魔女が、いた。「いやぁあぁあぁあ!」妹の悲鳴が響き渡る。
「助けて、助けて! 近寄らないで!」
悲鳴を上げるグレーテル。ふらつきながらも、妹を守ろうと、ボクは魔女の元へと向かう。
「おまえたち、どうやってここへ…?まぁいい。弱っているようだし、かまどにくべてしまえばいいさ!」
魔女は恐ろしい形相をしていた。いやだ、怖い、怖いよ…!
妹を守らなきゃいけないのに。なぜか、力が入らない。空腹や、キノコで弱っていたせいもあったかもしれない。
ボクは、魔女に引きずられるまま、かまどへと近づいて行った。
その時だった。
グレーテルが、魔女へと体当たりをした。 「…お兄ちゃんに、手をだすなぁあぁあ!」
不意を打たれたのだろう。魔女はよろけ、バランスを崩してかまどへと転がり込んだ。
「ぎゃああああああ!」魔女の悲鳴が響き渡る。
魔女は必死にかまどからはい出そうとする。
僕とグレーテルは力を合わせ、魔女を火かき棒で押し込み、かまどの蓋を閉めた。
…魔女の断末魔が聞こえる。ボク達は力尽き、意識を失った。
-----------------------------------------------
「…あれ?ここは…」
見慣れた、天井。ここは…。
「起きたか、ヘンゼル。ずいぶんうなされてたぞ」
「…グレーテルは!?魔女は、魔女はどうなったの?」
「…魔女? 何を言ってるんだ。 お前たちは森の外れに倒れていたんだぞ。
薪を捕りに行って、元の場所に戻ったら、お前たちがいない。
私もずいぶん、探したんだぞ。でも無事でよかった…」
…あれは、夢だったんだろうか?
-----------------------------------------------
さて、この物語には、ある真実が隠されています。それは、魔女の家の正体に関わることです。
それを表す言葉を、漢字2文字でお答え下さい。なお、文中より一文字ずつ抜出し可能です。父が、ヘンゼルたちを迷わせるために取った手段は?(自由回答形式)いろいろと推理することがあると思いますので、かってに君の設定に関わらず、自由に
投稿してもらったほうがいいかも。
「ヘンゼルとグレーテルの甘いお話」(明るい系 明日解答オープン予定)http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12479『人魚姫は笑わない』(感想募集中:ダーク系)http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12423『〜○○売りの少女〜』(感想募集中:ダーク系) もよろしくお願いします!
http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12327
「何言ってるんだ!もうすぐ、もうすぐ帰れるからな…!」
…日の光さえ届かぬような、深くて暗い森の中。3日3晩さまよったボクらの命は、風前の灯だった。
ボクの名前は、ヘンゼル。一緒にいるのは、妹のグレーテルだ。
ボクと妹、父と母と、4人で森の外れの一軒家で暮らしていた。
家は貧しく、母は意地悪だけど、父はボク達を庇ってくれたし、妹と力を合わせて、なんとか日々を送っていた。
ある日。昼ごろになって、父が急に「森へピクニックに行こうか」と言い出した。
見え透いた嘘だ。父の魂胆は分かっている。いや、父ではない、背後にいる母親の魂胆だ。
母はいつも「産まなきゃよかった」が口ぐせで、ボクや妹に暴力をふるっていた。
ボクが妹を庇うと、より酷い仕打ちを奮うのだ。
…ここ最近の飢饉で、口減らしに子供を捨てる親も増えている。
「森の魔女が子供たちをさらっていく」
「魔女の家はお菓子の家で、子供たちは勝手に家出して、そこで平和に暮らしている」
大人たちの、勝手な言い訳だ。本当のことは、ある程度大きな子供は分かっている。
(グレーテルは信じているみたいだが)
とうとう、ボクたちもその対象となったわけだ。
…ずいぶん、狭い道を通るな。前に森に来た時は、もっと通りやすかったけど…
まあ、簡単に捨てられるつもりはない。森へ入る途中途中に、お昼ごはん用のパンをちぎって撒いてきた。
これを辿れば、家に帰るのは難しくはない。
…はずだった。父が「薪を取ってくる」と言って立ち去った後、こっそり後をつけたところまでは良かった。
見失わないように必死で追いかけたが、森に慣れた父親の足には敵わない。
結局、途中で撒かれてしまった。目印のパンを探してみると…
まったく、見当たらない!鳥に食べられてしまったのか?
こんなことなら、河原で白い石でも拾っておくべきだった。
それから、3日3晩。同じ所をグルグル回っているような気がする。
空腹も限界だ。こんなことなら、あのパン、食べときゃよかった…
とうとう、空腹に耐えかねて、そこらに生えてるキノコや木の実に手を出してしまった。
…これがまたいけなかった。眩暈はするし、吐き気もする。
グレーテルは、もうまったく立てなくなってしまった。
目が霞む…もう、どこを進んでいるのかもわからない。
足に草や枝が絡みつく。獣道ではなく、道なき道を進んでいるようだ。
…もう、痛みの感覚すらない。だんだん、どうでもよくなってきた。
世界がぐにゃぐにゃ歪み始める。…ああ、もう、死んじゃうのかな?
…突然、視界が開けた。
月夜に、家が照らされている。あれは…?
「あ…お兄ちゃん…えへへ、お菓子の家だぁ…♪」
お菓子の家?妹を降ろして、霞む目をこすって良く見てみる。
ぼんやりとした視界に映ったのは、お菓子やレープクーヘン(ジンジャーブレッド)でかたどられた、お菓子の家だった。
「えへへ…クッキーに、ビスケット。花壇にはタルトもあるや。地面はガトーショコラだし…わぁ、よだれが出てきたぁ」
グレーテルは、呆けた顔をしながら、家に近づいていく。
ふと、家の中から肉を焼くようないい香りがしてきた。「うわぁ…お菓子も良いけど、ごちそう、食べたいなぁ…」
グレーテルは、無防備に家の中に入って行こうとする。
「待て…!ここがお菓子の家なら、魔女が…!」 慌てて、妹を追いかける。
家の中に入ると、そこには…
魔女が、いた。
「いやぁあぁあぁあ!」妹の悲鳴が響き渡る。
「助けて、助けて! 近寄らないで!」
悲鳴を上げるグレーテル。ふらつきながらも、妹を守ろうと、ボクは魔女の元へと向かう。
「おまえたち、どうやってここへ…?まぁいい。弱っているようだし、かまどにくべてしまえばいいさ!」
魔女は恐ろしい形相をしていた。いやだ、怖い、怖いよ…!
妹を守らなきゃいけないのに。なぜか、力が入らない。空腹や、キノコで弱っていたせいもあったかもしれない。
ボクは、魔女に引きずられるまま、かまどへと近づいて行った。
その時だった。
グレーテルが、魔女へと体当たりをした。 「…お兄ちゃんに、手をだすなぁあぁあ!」
不意を打たれたのだろう。魔女はよろけ、バランスを崩してかまどへと転がり込んだ。
「ぎゃああああああ!」
魔女の悲鳴が響き渡る。
魔女は必死にかまどからはい出そうとする。
僕とグレーテルは力を合わせ、魔女を火かき棒で押し込み、かまどの蓋を閉めた。
…魔女の断末魔が聞こえる。ボク達は力尽き、意識を失った。
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「…あれ?ここは…」
見慣れた、天井。ここは…。
「起きたか、ヘンゼル。ずいぶんうなされてたぞ」
「…グレーテルは!?魔女は、魔女はどうなったの?」
「…魔女? 何を言ってるんだ。 お前たちは森の外れに倒れていたんだぞ。
薪を捕りに行って、元の場所に戻ったら、お前たちがいない。
私もずいぶん、探したんだぞ。でも無事でよかった…」
…あれは、夢だったんだろうか?
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さて、この物語には、ある真実が隠されています。それは、魔女の家の正体に関わることです。
それを表す言葉を、漢字2文字でお答え下さい。なお、文中より一文字ずつ抜出し可能です。
父が、ヘンゼルたちを迷わせるために取った手段は?(自由回答形式)
いろいろと推理することがあると思いますので、かってに君の設定に関わらず、自由に
投稿してもらったほうがいいかも。
「ヘンゼルとグレーテルの甘いお話」(明るい系 明日解答オープン予定)
http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12479
『人魚姫は笑わない』(感想募集中:ダーク系)
http://quiz-tairiku.com/q.cgi?mode=view&no=12423
『〜○○売りの少女〜』(感想募集中:ダーク系) もよろしくお願いします!
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