剰余系の構成(整数の問題)≫ No.1 ≫No. 2
nn)/
2010/06/19 02:37
あらら、閉めちゃいましたか.確かにこの辺りを知っている者には、ほとんど直感的に
分かる問題ですが,高校生にも分かるように書くとなると、そう簡単ではありません.
ここ数日忙しくて、書く気力がなかったのですが、答えだけでも書いておくのでした.
では、米スロベニア戦を見ながら (終わった),問題の書き換えと証明をしておきます.
ただし、B = Sym(F_p) としています.
問 題
3以上の素数を p として、(整数を p で割った余りの) 集合 F_p = {0, 1, ..., p-1}
を考える.F_p 要素を並び替えた任意の順列 f = (f(0), f(1), ..., f(p-1)) について、
集合 A_f = {x f(x) mod p | x ∈ F_p} を作るとき、A_f の濃度(要素数)|A_f| の
最大値を求めよ.もちろん、複数の同じ値があれば、1個と数える.
解 答: max |A_f| = p - 1.
証 明
以下の3つの事実から明らかである.
f(0) ≠ 0 のとき |A_f| ≦ p - 1.
x ≠ 0, f(x) = 0 なる x が存在するので、0 f(0) = x f(x) = 0 であるから、
|A_f| ≦ p - 1.
f(0) = 0 のとき |A_f| ≦ p - 1.
ただちに分かるように,任意の x ≠ 0 について f(x) ≠ 0 である.
ここで、{1, 2, ..., p-1} の相異なる要素の任意の組 (x, y) に対し,
x f(x) mod p ≠ y f(y) mod p が成立すると仮定すれば、
1 f(1)・2 f(2)・...・(p-1) f(p-1) mod p = (p-1)! mod p である.
一方、1 f(1)・2 f(2)・...・(p-1) f(p-1) = (p-1)!・(p-1)! であるから、
(p-1)! mod p = 1 を得るが、これは、Wilson の定理 (p-2)! mod p = 1 に反する.
したがって、少なくとも1組は x f(x) mod p = y f(y) mod p なる (x, y) が
あるので、|A_f| ≦ p - 1.
|A_f| = p - 1 なる f が存在する
任意の x ≠ 0 について、x y mod p = 1 を満たす y が唯一存在するので、
この y を x^(-1) と書く.
いま、f(0) = 0, f(1) = 1 とおき、それ以外の x (2 ≦ x ≦ p-1) について
f(x) = 1 - x^(-1) mod p とする.明らかに 2 ≦ x^(-1) ≦ p-1 であるから、
2 ≦ f(x) ≦ p-1 であり、かつ、互いに等しくない.
すなわち、f は F_p の順列の1つであり、1 ≦ x f(x) = x - 1 ≦ p-2 を満たす.
よって、1だけが重なるから、|A_f| = p - 1 である.
終わりに
Wilson の定理や x^(-1) の存在についての説明は省略しました.
ネットや本で調べて下さい.ご要望があれば、説明をしても構いません.
nn)/ 2010/06/19 02:37
分かる問題ですが,高校生にも分かるように書くとなると、そう簡単ではありません.
ここ数日忙しくて、書く気力がなかったのですが、答えだけでも書いておくのでした.
では、米スロベニア戦を見ながら (終わった),問題の書き換えと証明をしておきます.
ただし、B = Sym(F_p) としています.
問 題
3以上の素数を p として、(整数を p で割った余りの) 集合 F_p = {0, 1, ..., p-1}
を考える.F_p 要素を並び替えた任意の順列 f = (f(0), f(1), ..., f(p-1)) について、
集合 A_f = {x f(x) mod p | x ∈ F_p} を作るとき、A_f の濃度(要素数)|A_f| の
最大値を求めよ.もちろん、複数の同じ値があれば、1個と数える.
解 答: max |A_f| = p - 1.
証 明
以下の3つの事実から明らかである.
f(0) ≠ 0 のとき |A_f| ≦ p - 1.
x ≠ 0, f(x) = 0 なる x が存在するので、0 f(0) = x f(x) = 0 であるから、
|A_f| ≦ p - 1.
f(0) = 0 のとき |A_f| ≦ p - 1.
ただちに分かるように,任意の x ≠ 0 について f(x) ≠ 0 である.
ここで、{1, 2, ..., p-1} の相異なる要素の任意の組 (x, y) に対し,
x f(x) mod p ≠ y f(y) mod p が成立すると仮定すれば、
1 f(1)・2 f(2)・...・(p-1) f(p-1) mod p = (p-1)! mod p である.
一方、1 f(1)・2 f(2)・...・(p-1) f(p-1) = (p-1)!・(p-1)! であるから、
(p-1)! mod p = 1 を得るが、これは、Wilson の定理 (p-2)! mod p = 1 に反する.
したがって、少なくとも1組は x f(x) mod p = y f(y) mod p なる (x, y) が
あるので、|A_f| ≦ p - 1.
|A_f| = p - 1 なる f が存在する
任意の x ≠ 0 について、x y mod p = 1 を満たす y が唯一存在するので、
この y を x^(-1) と書く.
いま、f(0) = 0, f(1) = 1 とおき、それ以外の x (2 ≦ x ≦ p-1) について
f(x) = 1 - x^(-1) mod p とする.明らかに 2 ≦ x^(-1) ≦ p-1 であるから、
2 ≦ f(x) ≦ p-1 であり、かつ、互いに等しくない.
すなわち、f は F_p の順列の1つであり、1 ≦ x f(x) = x - 1 ≦ p-2 を満たす.
よって、1だけが重なるから、|A_f| = p - 1 である.
終わりに
Wilson の定理や x^(-1) の存在についての説明は省略しました.
ネットや本で調べて下さい.ご要望があれば、説明をしても構いません.