ｸｲｽﾞ大陸

「…現場となったのは、ここ。被害者のコレクションルームです。」
「ふーん…。すごい散らかってるね。」

捜査一課の佐井熊は、上司の浮雲と共に現場に到着した。
狭いコレクションルームは、格闘があったのか棚から色々なものが落ちている。
その全てが、「パズル」だった。


まず目立つのが、ジグソーパズルのピース。
いくつものパズルが混ざり合い、もう恐らく完成は難しいだろう。
次に目立つのは、シルエットパズルの木片。
そして、なぜか大量のマッチが散乱していた。

被害者は、シルエットパズルの棚の前で倒れていた。
ナイフで胸部を刺され、失血死。
現場に散乱したパズルや、絨毯には血がじっとりと染み付いていた。

「こりゃー酷いね。何より片付けが大変だ。」
「そうですね。」
「この丸い輪っかは何のパズルだい？」
「それは、ハノイの塔ですよ。知らないんですか？」
「ふーん。知らない。」

「被害者の名前は、流備 久平（りゅうび きゅうべい）
　定職には着いてませんが、パズル愛好家と言う名称で様々な仕事をしています。
　死亡推定時刻は、昨日の12時…夜のです。
　恐らく、何者かと口論になり、揉み合いの内に刺されたといった所でしょう。」
「ふーん。容疑者は？」
「はい。えーと。
　菱野 松太郎（ひしの しょうたろう）
　…パズル愛好家仲間です。愛好家仲間、と言う意味はよく分かりませんが。
　三角 杉雄（みすみ すぎお）
　…被害者の友人ですね。だいぶ昔からの仲みたいです。
　台場 桧（だいば ひのき）
　…被害者の幼馴染です。被害者と恋人関係にあった時期もあったようですね。」
「ふーん。無職なのに大変だね。」

「ところで佐井熊くん。被害者は、発見時に何か握っていたみたいだけど…？」
「ああ、これです。」

佐井熊が示した机の上には、クロスワードや数独の本と共にに
シルエットパズルのピースと思われる3つの木片が並べてあった。
直角三角形、すこし歪んだ台形、歪な菱形といった所か。

「この3つ？ これもパズルなの？」
「はい。現場に散乱していたパズルの1つみたいですね。
　《DEVIL》と言う名前の、シルエットパズルのピースです。」
「ふーん。その、"シルエットパズル"っていうのは何？ 影踏み？」
「タングラムですよ。決まった形のいくつかのピースを、
　黒く示された形にするんです。この辺りが、シルエットと呼ばれる所以ですかね。」
「ふーん。難しそうだね。この3つも、組み合わせれば何かの形になるんじゃない？」
「ええ。その通りです。幾つか形が出来るようですね。
　まず…こうして、菱形。こうすると…直角三角形。
　これをこっちにもってくると…台形。横に並べて…平行四辺形。」
「ふーん。まぁ色々とあるって事か。材質は？」
「ええと、ブナの木みたいですね。」
「ふーん。手作りなのかな…まぁいいや。」
「…今の所、これ以外のヒントが見つかっていません。」
「ふーん。でももうヒントなんていらないじゃないか。」
「え？」


「だって、犯人はこの人じゃないか…何で捕まえないの？」


-問-

さて、流備を殺した犯人は誰だろう？
その人が犯人になる理由は？