遠隔殺人 JMその7 ≫No. 1
永久駆動
2009/06/13 00:44
「主人の死因はわかりましたのかしら。」
「検死解剖でもさっぱりです、睡眠中の突然死としか言えません。
ただ調べたところ死亡時にあなたと電話中でした。」
「はい、電話はしていましたが会話はしていません。
変な話ですが私、主人のいびきを聞かないと安眠できませんの。
先週主人が沖縄に出張してからは毎晩主人の携帯に電話してました。
主人には携帯を枕元に置いたまま眠ってもらいます。
携帯で主人のいびきを聞きながら私も眠りますの。」
「通話中にお互い眠るのですか?携帯を切らずに?」
「朝起きて切ります。家族通話無料の携帯ですから料金も心配ありません。」
「死亡当日の電話は?」
「やはりほとんど会話はせず、私もすぐ眠ってしまいました。
朝になってそのまま携帯を切りました。」
「携帯会社に通話記録の裏はとったか。」
「これっす、毎晩朝までの通話。間違いないっす。」
「夫人の友人とかいう女の話は?」
「会話中に夫人がぽろっと『夫を殺すいい方法を見つけた』と言ったとか。」
「実際そのとおりに夫はぽっくり、遺産はごっそりか。」
「夫人がずっと東京にいたことはたくさんの証人がいるっす。
夫人のアリバイは完璧っす。なんせ東京と那覇っす。電話じゃ殺せないっす。」
「何か方法があったはずだ。」
「ジョークを聞かせれば腹がよじれて死ぬっすね。
いきなり大声をだせばショック死、心臓停止っす。」
「ガイシャに心臓疾患はなく心臓も含めて健康そのものだった。
驚かされたりショックな事を言われただけで死ぬことはありえない。
深夜から朝まで連日繰り返されたこの長い通話時間にカギがあるはずなんだ。」
「そうか、しゃべり続けて眠らせなかったっす。夫は睡眠不足で死んだっす。」
「ガイシャは死亡当日も普通に仕事をした、眠そうでも疲れてもいなかった。」
「それなら眠った夫に延々と朝まで呪いの歌を聞かせ続けたっす。」
「なんだその呪いの歌というのは?」
「貞子に歌わせるっす。」
「(ため息)催眠術をかけた相手に電話でキーワードを言って
暗示を発動させる事はできる。後催眠というやつだ。
眠った相手に暗示を繰り返して
暗示を強めていたのかもしれない。」
「屋上から飛ぶ・屋上から飛ぶ・屋上から飛ぶ・って感じっすね。」
「だがガイシャは睡眠中の自然死だ、暗示で何か行動したのではない。
それに生存本能が無意識にでも拒絶するから
死につながるような暗示はまず成功しない。」
「『呼吸がとまる』みたいな暗示はありえないという事っすね。
暗示でも催眠術でもないっすか。
猛獣が吠える声を聞かせれば夫は悪夢を見る、うなされて死ぬっす。
ガラスを爪でひっかいて聞かせれば、ストレスで死ぬっす。」
「人間はそんな簡単に死なない。
まあ不可聴域の音波が人に不快感を与えるという話はあるな。
若者を撃退するモスキート音などもある。
でも電話回線は不必要な音域をカットしてたと思う。」
「わかったっす、超音波っす。まず窓ガラスを超音波で割ってから、
コウモリと蚊を呼び集めて夫を襲わせたとか。」
「だから超音波も電話回線がカットする不可聴域の音波だ。
そういうんじゃない。
彼女は電話という道具をつかって
もっと夫の死に直接つながる何かをしたんだ。
本当に“呪い”のように夫の寿命そのものを消す方法があれば・・・・
電話のむこうでは夫が寝ていた・・・・・・そうか!」
(第一章 終)
問題 この恐るべき遠隔殺人のトリックは?
「検死解剖でもさっぱりです、睡眠中の突然死としか言えません。
ただ調べたところ死亡時にあなたと電話中でした。」
「はい、電話はしていましたが会話はしていません。
変な話ですが私、主人のいびきを聞かないと安眠できませんの。
先週主人が沖縄に出張してからは毎晩主人の携帯に電話してました。
主人には携帯を枕元に置いたまま眠ってもらいます。
携帯で主人のいびきを聞きながら私も眠りますの。」
「通話中にお互い眠るのですか?携帯を切らずに?」
「朝起きて切ります。家族通話無料の携帯ですから料金も心配ありません。」
「死亡当日の電話は?」
「やはりほとんど会話はせず、私もすぐ眠ってしまいました。
朝になってそのまま携帯を切りました。」
「携帯会社に通話記録の裏はとったか。」
「これっす、毎晩朝までの通話。間違いないっす。」
「夫人の友人とかいう女の話は?」
「会話中に夫人がぽろっと『夫を殺すいい方法を見つけた』と言ったとか。」
「実際そのとおりに夫はぽっくり、遺産はごっそりか。」
「夫人がずっと東京にいたことはたくさんの証人がいるっす。
夫人のアリバイは完璧っす。なんせ東京と那覇っす。電話じゃ殺せないっす。」
「何か方法があったはずだ。」
「ジョークを聞かせれば腹がよじれて死ぬっすね。
いきなり大声をだせばショック死、心臓停止っす。」
「ガイシャに心臓疾患はなく心臓も含めて健康そのものだった。
驚かされたりショックな事を言われただけで死ぬことはありえない。
深夜から朝まで連日繰り返されたこの長い通話時間にカギがあるはずなんだ。」
「そうか、しゃべり続けて眠らせなかったっす。夫は睡眠不足で死んだっす。」
「ガイシャは死亡当日も普通に仕事をした、眠そうでも疲れてもいなかった。」
「それなら眠った夫に延々と朝まで呪いの歌を聞かせ続けたっす。」
「なんだその呪いの歌というのは?」
「貞子に歌わせるっす。」
「(ため息)催眠術をかけた相手に電話でキーワードを言って
暗示を発動させる事はできる。後催眠というやつだ。
眠った相手に暗示を繰り返して
暗示を強めていたのかもしれない。」
「屋上から飛ぶ・屋上から飛ぶ・屋上から飛ぶ・って感じっすね。」
「だがガイシャは睡眠中の自然死だ、暗示で何か行動したのではない。
それに生存本能が無意識にでも拒絶するから
死につながるような暗示はまず成功しない。」
「『呼吸がとまる』みたいな暗示はありえないという事っすね。
暗示でも催眠術でもないっすか。
猛獣が吠える声を聞かせれば夫は悪夢を見る、うなされて死ぬっす。
ガラスを爪でひっかいて聞かせれば、ストレスで死ぬっす。」
「人間はそんな簡単に死なない。
まあ不可聴域の音波が人に不快感を与えるという話はあるな。
若者を撃退するモスキート音などもある。
でも電話回線は不必要な音域をカットしてたと思う。」
「わかったっす、超音波っす。まず窓ガラスを超音波で割ってから、
コウモリと蚊を呼び集めて夫を襲わせたとか。」
「だから超音波も電話回線がカットする不可聴域の音波だ。
そういうんじゃない。
彼女は電話という道具をつかって
もっと夫の死に直接つながる何かをしたんだ。
本当に“呪い”のように夫の寿命そのものを消す方法があれば・・・・
電話のむこうでは夫が寝ていた・・・・・・そうか!」
(第一章 終)
問題 この恐るべき遠隔殺人のトリックは?