小野田だ。
やはりここの人たちは只者ではないようだな。
警察のものが分からないものをいとも簡単に解いてしまった。ただ私もすぐ分かってしまったが。
ではまた新しい事件を紹介しよう。
ある日、Ｓ県の県庁所在地の郊外でピアノ教室を開いている菅野歌子（３７）が行方不明となった。
私たちはすぐにそのピアノ教室に出向いた。
中は全く荒らされておらず、いつもどおりの家庭的なピアノ教室、という雰囲気であった。
現場検証をしている途中、私はピアノの弱音ペダルの下にある紙が挟まっているのに気付いた。
それを見ると、


　私の居場所は
　　Deses A Fes H Eis E Disis E
　　Fisis E Ces G Gisis E

雄輝、この暗号を読むのに協力してあげて。お願いよ。
これを１文字に直してそのあと数○○に直すの。それからけいさつの人にわたして。
あと、けいさつの人にわたすときは「ヒントは『かこうグリッサンド』」って言うのよ。たのんだわよ。


「・・・雄輝君、この意味が分かるかい？」
雄輝君は歌子の息子で、小学４年生。３歳から今までずっと歌子から音楽の指導を受けてきたそうだ。母がいなくなってパニックではあるが、雄輝君も状況を冷静に判断しようと必死だ。
「う〜んと、これはこうするのかな。これはこうして・・・出来た！」
聡明な雄輝君は５分もかからずに歌子からの指示をやってのけてしまった。
私は音楽はほとんど教わってこなかったので、なぜそうなったのかよく分からない。雄輝君に理由を聞くと、
「え〜。時間ないのに。じゃあヒントだけ。『is』は『半音上がる』、『es』は『半音下がる』って感じかな。ただ英語っぽいけど英語とちょっと違うから気をつけてね。」
そういって雄輝君はどこかへ行ってしまった。
私は少し考えて、「そういうことか・・・。さすがピアノを教えているだけあるな。花野刑事、○○○○にバリケードを張るんだ。」「うっす。」
どうやら歌子は事前に自分が誘拐されるかもしれないことを知っていたようだ。


・・・さて、歌子が監禁されている場所はどこだろうか？