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■ nothing ( No.37 )
日時: 2009/02/25 17:00
名前: 解決編

「文章が、相手の名を示す・・・。そう、この文章はいわゆる『字謎』でした。
 秘密の恋の相手を、彼女は字謎で表していたんです。

もしもあなたが心を持たず
代わりに言葉を持っていたのなら
愛を語ってくれたのかしら


 文章中の『わたし』と一緒に過ごしているとき、
 彼は愛を『語』りませんでした。心を持って、言葉を持っていなかったからです。
 『語』から言葉を失くして心、つまり「りっしん遍」をつけると、『悟』になります。

心をなくしてしまったあなたは
仕事に追われていましたね


 仕事に追われて『わたし』と会っていない彼は、心を亡くしました。
 心を亡くす、つまり『忙』しかったのです。

あなたの心は下になく
そばにあったはずなのに
わたしはあなたの心の傍らに
いつも寄り添っていたはずなのに


 田の下に心で『思』のように下心ではなく、そばに。
 『わたし』のそばに心があったはずでした。
 『悟』の旁(つくり)は『吾』・・・『わたし』です。」

「つまり彼女は、手帳の1ページに、『悟』の一文字を記していたのです!」

「田所 悟・・・別居中か。『離婚して君と』って言ってたじゃない!なんてやつかな。」
「うーん、それはわからないけど、想像するに慎みぶかい美人だったろうになぁ、勿体無い。」

「パパ!美人は関係ないですよ!大体これは物書きであるパパの専門分野でしょう!」
「読もうとしたらお前が取り上げたんじゃないか!」

「まぁまぁ、兄さんもミモリちゃんも・・・。」
「あ、そういえばこれ取りに行ってたんだった。
 はい!ミモリから保坂さんへのバレンタインのチョコレート。・・・義理じゃないよ・・・。」

「え・・・えぇ???」
「『お情けチョコ』だよ♪」

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3月14日(土)
紙袋を片手に玄関のチャイムを押しながら、保坂はつぶやいた。
「来年こそは・・・。」