コメント ( No.47 ) |
- 日時: 2016/02/10 23:17
- 名前: 紅巾
- 「では、答え合わせの時間だ」
俺は改めて赤井に向き直る。 「よろしく頼むよ」 赤井も神妙な面持ちで返してくるが、真実が神妙とは程遠い位置にあることを知っている俺は思わず苦笑した。 「まず、ややこしくなった原因から話そうか」 「原因?」 「ああそうだ。そしてその原因は……お前だ」 赤井を指さす。 「原因が俺だって?」 「まあ、正確に言うと『お前が紙を持ってこなかったこと』だが」 俺は溜息を吐きながら、 「お前は言ったな、『覚えているから問題ない。そのヒントにはレモンと書かれていたんだ』と」 「言ったけど、それが?」 「覚えているから問題ないと断言した上でレモンと書かれていた、なんて聞いたから俺は勘違いしてしまったんだ。紙には『レモン』と書かれていたんだとな」 「そうだが……それがどうした?字ではなく絵だと思ったとか?」 「いや、もし絵だったら『レモンがかかれていたんだ』という表現になるはずだ。そうではないんだから、間違いなく字が書かれていたことになる」 「なら問題ないだろう。あれには確かにレモンと書かれていたんだから」 「どこがだよ」 俺は赤井の前に紙を突き出した。自分で書いたものだが、内容が青緑君のものと相違ないことは赤井に確認済みだ。 ――そこに書かれていたのは『レモン』ではなく『lemon』だった。 「そう言われても、俺にはレモンとしか読めなかったし、実際、そうとしか読めないだろう?」 赤井が言い訳がましく言う。まあ、あれだけ自信満々だったのだからそうとしか読めなかったのだろうが……。 「それがそうでもないんだよ」 俺は日本茶を好まない赤井にもきちんと伝わるように説明することにした。 「見ての通り、この紙に書かれているのはアルファベットだ。それは分かるな?」 「馬鹿にしすぎだ。当然分かる」 「じゃあ、固有名詞は最初の一文字を大文字で書くことは分かるか?」 「馬鹿にしすぎだって。当然分かるさ」 「じゃあ……」 俺は紙に書かれている一文字目を指さし、 「これがLの小文字じゃなかったとしたら何だと思う?」 「……分からん」 「おい」 ここまで言ったら気付いてほしいものだ。俺は赤井をパソコンまで誘導する。 「キーボードのここを見ろ」 「ああ、なるほどな」 鈍い赤井でもようやく納得してくれたようで安堵した。大体キーボードにはアルファベットの大文字が書かれている。 「そう。一文字目はLの小文字ではなく、iの大文字だったんだ」 「ということは……」 「そうだ」 全く、答えまで随分遠回りをしてしまったようだ。赤井が青緑君から受け取った紙を『ヒント』だなんて言うから少なからず混乱した。赤井は答えが見つからなかったからそれをヒントだと思い込んだようだが、そうじゃない。
――これはヒントではなく、答えだったんだ。
「紙に書かれていたのは『lemon』で一文字目がiの大文字だから『いえもん』と読める。つまり、答えはお前の好まない日本茶で固有名詞でもあるサントリーから発売されている伊右衛門(いえもん)だ」
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