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ビン・ボウ警部補の事件録・24『逃げなかった被害者』
難易度:★★★  
?空蝉 2013/05/15 00:47
 その日、普段なら人ひとり見出せない深夜の郊外の通りを、一台の車が走っていた。
 まるで誰にも見られたくないと言わんばかりに、ライトを消し、静かに進んでいくその様は、獲物にこっそりと忍び寄る人食いザメを思わせる。
 「・・・・・・もしもし、カルテルさんか?」その車の運転手が、携帯電話を片手に話していた。「もうすぐ目標宅に到着する。ターゲットは・アルフレッド・フーゴウで間違いないな?」
 <ああ、間違いない>電話の相手は答えた。<何度も言ってきたと思うが、マズシー氏は今回の計画に自らの全精神を注いでいる。くれぐれもぬからないでくれよ>
 「分かっている。伊達に裏の社会で生きてきたわけじゃない。ましてや今回の目標は、無害な老人だ。しくじる方がおかしい」
 <力強い言葉でなによりだ。しかし――>
 「・・・・・・何だ?」
 <噂によると、君は、その・・・・・・殺し方をたったひとつに限定しているそうだが・・・・・・>
 「ああ、俺のポリシーだからな」丁字路に差しかかったところで、男はハンドルを切った。「それ以外の殺し方は、何があってもしない」
 <だが――>
 「言いたいことはわかってる。心配なんだろう。殺し方を限定されると、万が一の時、臨機応変を欠くのではないかと」
 <ああ、はっきり言えばな>
 「さっきも言ったが、相手は老人だ。余裕は十分。それに、殺しの流儀を限定しているとはいえ、腕は一流を自負している。何も問題はない。・・・・・・たぶん」
<いやいや、たぶんじゃ困る。ぜったいにしくじらないでくれ>
「まかせておけ。スムースに任務を遂行後、良い結果を知らせるさ」
 <ほんとに大丈夫だろうな?では、報告を待ってるぞ>
 電話が切れると、深い静寂だけが後に残った。それから男はしばらくの間、無言でハンドルを握っていたが。やがて車のスピードをゆっくりと落とし、大きな鉄門の前で停まった・・・・・・。

 「殺されたのは、アルフレッド・フーゴウ氏、76歳。5つの貿易会社を経営し、やり手の投資家でもあります。金品が盗まれていないことから、金目当ての殺人ではなく、また、現段階の捜査において、氏に恨みを持つ者の名前も挙がっていません。ですが、現場が散らかっているところから、犯人と被害者の間で立ち回りらしきものがあったと思われます」フーゴウ氏の遺体を前に、中・流刑事が淡々と状況を説明している。事件現場はフーゴウ氏宅のニ階、寝室だった。
 「やれやれ、もし金品が盗まれていれば、犯人はビン・ボウ警部補で確定だったんですがねえ」利子刑事がおもしろ気な口調で言った。
 「わ、私じゃないぞ!違うからな!・・・・・・絶対に違うからな!!」以前、ある事件の容疑者として扱われたこともあるせいか、ビン・ボウ警部補の動転ぶりは甚だしかった。
 「分かってますよ。冗談ですって」
 「君が言うと冗談に聞こえんのだ」
 今から10分前、隣の家が騒がしいとのことで、向かいの家の住人から通報があった。被害者の死亡時刻もその頃とほぼ一致しているが、犯人にはタッチの差で逃げられたのだろう、ビン・ボウ警部補達が駆けつけた時には、被害者の死体以外、人の姿はなかった。
 「実は、通報を下さった方が事件の一部始終も目撃していたようです。ニ階の窓越しに、現場の様子を見ていたらしくて・・・・・・」中・流刑事が言った。
 「では、犯人の姿を見ているということか。で、その目撃者兼通報者は何と言っているんだ?」
 「それなんですが・・・・・・」中・流刑事の表情に困惑の色が差し、利子刑事に目を向けた。それを受けた利子刑事も、困ったように米神を掻く。
 「どうしたんだ?何かあったのか」
 「実は、目撃者に事件当時の様子を聞いたところ、変なことを言いだしましてね」中・流刑事は部屋の角に佇む、被害者と同年代くらいの老人に目を向けた。「彼です」
 「変なこと?」ビン・ボウ警部補も老人の方に視線を遣った。
 「まあ、話を聞いてみてください」
 中・流刑事に促されたその男は、ビン・ボウ警部補の前に来ると、一方的に喋り始めた。
 「普通、自分を殺そうとやってきた奴に出遭ったら、自分に勝ち目があると思わん限り、逃げるじゃろう?でもな、まさに逆のことが起こったんじゃ!
 ワシはその時、たまたま自分の家のニ階、書斎にいたんじゃが――窓越しにフーゴウさんの家の寝室が見えるんじゃ――突然、物騒な物を持った男がフーゴウさんの寝室に押し入ったのが見えてな。で、アームチェアに腰かけ本を読んでおったフーゴウさんは驚きのあまり飛びあがった。ほんじゃがな、フーゴウさんは、怯え、逃げるかと思いきや、なんと、犯人に立ち向かって行っとったんじゃ!じゃが、相手の男はフーゴウさんよりも年若い奴で、どう転んでもフーゴウさんがどうにか出来る相手じゃなかった・・・・・・。に・も・か・か・わ・ら・ず、じゃ!なんと、相手の男は、向かってくるフーゴウさんからしきりに逃げとったんじゃ!するとフーゴウさんはそれに合わせて犯人との距離を詰めて・・・・・・しばらくその繰り返しだったよ。まあ、最終的には『逃げ切った』犯人によってフーゴウさんは殺されてしもうたがのう・・・・・・。
 殺される者が殺す者を追い、殺す者が殺される者から逃げる・・・・・・どういうことか、おぬしには分かるかの?ふぉっふぉっふぉ・・・・・・」

 「・・・・・・すみませんが、目撃証言を謎かけ風にアレンジするのはやめて頂けませんか?もっとも、解けてしまえば謎は謎ではなくなるのですがね・・・・・・」
 「まさかおぬし、分かったというのか!?」
 「ええ」
 「遠慮のない奴じゃのう」

 ビン・ボウ警部補の推理とは?
Answer「犯人の持っていた凶器は狙撃銃だったんだ。銃身の長い狙撃銃は、目標に接近されれば役に立たない。だからこそ、被害者は、撃たれないように、出来るだけ犯人との距離を詰めようとしたんじゃないのか?被害者が詰め寄るから、犯人は距離を作るために、被害者から離れる。するとまた被害者は犯人に詰め寄る。そんな光景が、被害者が“追い”、犯人が“逃げる”ように見えたのだろう」
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