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ビン・ボウ警部補の事件録・P『容疑者ビン・ボウ』
難易度:  
?空蝉 2012/09/05 15:43
 「ここがリキッド警察署ですか」アッカ警察署所属の新米刑事、ケイン・マルク巡査は、隣に立つ上司、レート・スロットマン警部に訊いた。「ここに彼がいるんですね」
 「そうだ」スロットマン警部は、その体格に相応しい、重量感のある声で答えた。「確か、君は彼に会うのは初めてだったね」
 「はい。・・・・・・ですが、彼との初対面が、まさかこんな形になってしまうなんて、思ってもみませんでしたけど」
 「だろうな」スロットマン警部は、リキッド警察署を見上げると、ひとつ大きく溜息を吐いた。「まさか、警察界の英雄を、今日、我々がこの手で逮捕せねばならないとはな」

 リキッド警察署玄関の大扉がおもむろに開かれると、そこには二人の男が立っていた。その独特の雰囲気からか、一見して、警察関係者だと分かる。一人は黄色い巻き毛の若者で、ブルーの革ジャンに真っ赤なジーンズといった出で立ち。もう一人は、薄茶色のトレンチコートを羽織った、大柄の中年男だった。
 ビン・ボウ警部補は、ちょうど署内の売店で『あたりめ』を買い終えたところで、そのうちの一本を手に取り、まさに口の中に入れんとするところだった。二人の姿を目に留めると、「おお!」と一声、明るい表情で二人の元へ歩み寄った。
 「これはこれは、アッカ署のスロットマン警部じゃありませんか。隣の若いのは、新人ですかな?それにしても、久しぶりですねえ。いつもうちの娘がお世話に・・・・・・」
 だがスロットマン警部は、ビン・ボウ警部補が話すのを片手で制し、法の番人たる截然とした口調で告げた。「ビン・ボウ警部補。あなたを強盗殺人の容疑で逮捕します」

 「殺されたのはトニー・ザンダカーン氏、45歳。株式会社ロンダ・リングの最高経営者です。死因は刺殺。刃渡り20cmのナイフで被害者の胸をズドン。死亡時刻は今から約2時間前。これは、まさに事件当時、被害者と同じ現場にいたスミ夫人が証言してくれています。ちなみに、通報が2時間も遅れたのは、あまりに突発的な出来事に彼女は放心していたからだそうです。まあ、無理もないでしょう」
 リキッド警察署所属の中国人捜査員、中・流刑事は、事件のあった被害社宅、二階にある書斎にて、遺体、被害者の旧き良き伴侶しかし本日をもって未亡人となったスミ・ザンダカーン夫人、そして多くの捜査員を前に、事件の概要を説明している。「今回は、リキッド警察署とアッカ署の合同捜査ということで、いつもより現場がごちゃごちゃしていますが、犯人は逮捕済みですので、まあ、現場検証にもそう時間はかからないでしょう」
 「部屋ので控えるスミ夫人、刺殺された夫を物悲しく視察する、か・・・・・・」同じく、リキッド警察署の捜査員である利子増太郎刑事が、得意の駄洒落の出来栄えに自己満足の笑みを浮かべつつ、スミ・ザンダカーン夫人の方に顔を向けた。
 だが、スミ夫人は、もはや亡き夫を見てはいなかった。書斎の隅で、驚くべき静けさを湛えつつ、顔を床に俯けている。
 「にしても、ついに日頃の貧しさが祟ってやっちゃいましたかぁ、ビン・ボウ警部補」中・流刑事が目を向けた先には、二人の刑事、スロットマン警部とマルク巡査の間に挟まれた、ビン・ボウ警部補の姿があった。その手には手錠が掛けられている。
 「違う!さっきから何度も言っているが、私はやっていない!」
 「正義感溢れる信念堅き警察魂も、貧困には勝てない。これが今日、証明されました。同情しますよ、ビン・ボウ警部補」利子刑事が、憐憫の眼差しをビン・ボウ警部補に向けた。
 「ボウ警部補・・・・・・」その目に物悲しさと興のない交ぜになった、奇妙な表情でビン・ボウ警部補を見つめる姿がもうひとり、同じくリキッド警察署所属のコゼニー・カネクレイ警部だった。「そう落ち込まないで。刑務所に入れば今よりももっといいものが食べられるだろうから・・・・・・」
 「だから私は・・・・・・」しかし、『やってない』を連呼したところで何の解決にもならないことはよく分かっている。ビン・ボウ警部補は、自らの無実を証明するために、スミ夫人の証言を聞いてみることにした。「ザンダカーン夫人。あなたは私がザンダカーン氏を殺したと仰る。だがしかし私はやっていない。納得いかないまま刑務所にぶち込まれるのはごめんなので、どうでしょう、事件当時の様子を聞かせていただけますかな?」
 俯いていたスミ夫人は顔を上げると、沈痛だが的確な言葉遣いで、次のように述べた。
 「今から約2時間ほど前、私は夫とこの書斎にずっと二人でおりました。主人に、来月解雇予定の従業員のリストに目を通してくれと頼まれたので、ここで主人と一緒に、資料を読んでいたのです。ふと、窓の外を見ると、私たちの家に向けて、男が歩いて来ておりました。一目見て、ビン・ボウ警部補と分かりました。彼は、その功績から頻繁に新聞でも取り上げられてますし、あの継ぎ接ぎだらけのトレンチコートは、見紛う方もありません。私と主人は訝りながら窓の外を注視していたところ、彼は、いきなりこちらに向かって走り出しました。そして、ドン、という鈍い音。ドアが蹴り開けられたのだと分かりました。それから彼は、家の中へ闖入して来たのです!この時すぐに、彼が強盗に来たのだと直感しました。といいますのも、彼が走り出した時、彼の手にはナイフが握られているのが見えたからです。
 私たちの家には一階から二階へ通じる階段から踊り場にかけて、有名な画家の絵がいくつも掛かっているのですが、書斎へくる途中、彼はそれを物欲しそうに眺めていました。どれも高価なものばかりですので、高く売れるとでも思ったのでしょう。それから二階へ来ると、彼はしばらく右往左往しておりましたが、やがて私たちのいた書斎の扉を見つけると、それはゆっくりと開かれました。
 私たちの姿を認めるや否や、彼は一目散に主人に向かうと、ナイフを胸に叩きつけ、まるで以前から知っていたかのように、金庫のダイヤルをスムースに回し、札束を奪って逃げたのです!
 実は、金庫のダイヤル番号は、主人が自分の家の住所とともに、HPに公開していました。なぜそんなことをするのかと私が以前訊ねたところ、主人は『スリルがあっていいじゃないか』と、よくわからないことを言っていたのを覚えています。
 とにかく、ダイヤル番号はHPで知ったのでしょう。
 本当に怖かったです。ビン・ボウ警部補が書斎を訪れるまでの時間といったら・・・・・・。まるで処刑を待つ人のような心持ちでしたよ。
 書斎のドアを見守りながら、主人と私は二人で震えていました。鍵を掛けようにもドアには鍵がありませんでしたし、隠れる場所もありません。その時、震えながら主人は、こう言いました。『ああ、こんなことなら住所と番号、公開するんじゃなかった・・・・・・』。当たり前だっつーの!」

 「奥さん・・・・・・」ビン・ボウ警部補の目が、生き生きと光った。「あなたの証言の中には、矛盾が含まれています」

 ビン・ボウ警部補の推理とは?
Answer 「あなたは証言の中でこう言いました。『私たちの家には一階から二階へ通じる階段から踊り場にかけて、有名な画家の絵がいくつも掛かっているのですが、書斎へ来る途中、彼はそれを物欲しそうに眺めていました』『彼はしばらく右往左往しておりましたが』・・・・・・。奥さん、あなた事件当時、ずっと書斎にいたんですよね?なのに、どうして家に闖入してから書斎を襲撃するまでの強盗の様子がわかったのですか?ずっと書斎にいたのなら、その間の強盗の様子なんて、見えるわけないと思いますがね」
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