クイズ大陸



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犯人はカラス!? ≫No. 1
?シーラ 2007/12/02 01:46囁き
秋の深まりを感じる11月半ばの土曜日、私は翌日に行われる従姉の結婚式に出るため、生まれ故郷の山峰(やまみね)市に戻ってきた。遠くに見える峰々は既に雪を冠しており、東京の暖かさに慣れてしまった身には、風の冷たさがひとしおに感じられる。
友人たちとの夜の会食までに時間があったので、私は繁華街から少し中に入ったところにある、お気に入りの喫茶店に足を向けることにした。そして角を曲がろうとしたその時、
「あ、あの…失礼ですが……深山(みやま)さん?」
向かいの人ごみの中から背広姿の男性が、自分に声をかけて来た。あれ、この人……?
「そうですが、えーと、どこかでお会いし……あっ、もしかして富井(とみい)君!?3−Aの?」
「そう、富井です。良かった、深山さんだ……どうもお久しぶり。」
「本当、久しぶりね。一瞬分からなかったけど、でもよく見ると富井君だ。」そうだ、彼と最後に会ったのは、多分6年前の高校のクラス会の時。地元の山峰大に進んだ彼は、公務員を目指しているって言ってたっけ。
その後、噂で念願かなったって聞いたような記憶が……背広なんか着て、土曜も仕事?
などと考えていたら、富井のほうから、「こんな時期に帰省してたんだ?…でも会えて良かったよ。…実は僕、今調べ物をしてたんだけど、どうしても分からなくて……深山さん確か国文科を出て出版社に勤めているんだったよね?」と切り出してきた。
「そうだけど?」
「あの、教えてもらいたいことがあるんだけど、少し時間ある?そこに喫茶店もあるし…」
私が行こうとしていたお店だった。どことなく浮かない様子の富井が気にかかり、彼の話を聞いてみることにした。

「本当は捜査情報を部外者に話すのはいけないんだけど…」と前置きしつつ、富井は一週間前に起きた山峰大生殺人事件について概略を語った。何と、公務員は公務員でも、山峰警察署に勤めている刑事だったとは!
「被害者は高杉二郎、21歳、山峰大文学部3年で、国語国文学科所属。アルバイトに塾で小中学生に国語を教えていた。借家‐といっても大家の敷地内の離れで一人暮らしをしていたんだけど、一週間前の夜11時ごろ、外出先から帰宅したところを家のすぐ外で何者かに背後から殴られ、気を失ったところを絞殺されたんだ。」そう、この事件は、東京でも報道された。人々はのんびり、街はこじんまりとした山峰で、しかも地元ではそれなりのステイタスがある山峰大生が殺されたという事実には、結構衝撃を受けたものだ。
「唯一の目撃証言は、死亡推定時刻とほぼ同じ頃、近くの道路を自転車で駆け抜けていった人影を見た…というもので、帽子やマフラーで顔をおおっていたし、深夜で街灯も暗いため、黒っぽい服だったという程度しかわからず、人相は全く不明。大家のほうも、耳が遠いお年寄りの夫婦なんで、物音には気づかなかったと言ってるんだ。」
「なるほど、誰かが待ち伏せしていたわけね……でもそんな話を私にしても余り意味がな…」
「いや、ここまでは前置き。…我々は怨恨の線を追って、被害者の周辺から彼とトラブルがあった人間を五人に絞り込んだ。全員一人暮らしで、しかも平日の夜中なんで皆アリバイがない。容疑者を一人に特定できる証拠もない…それで、被害者の兄から聞いた証言が意味を持つんじゃないかと僕は思っているんだけど……」
「上司はそうは思ってないとか?」
「まあ、そうだね。漠然とした内容だからね……被害者は海坂市出身で、実家に最後に帰省したのが三週間前だったんだけど、その時兄が何気なく、母親がカラスに襲われた話をしたんだ。」「襲われた?」
「そう、その少し前に母親が朝ゴミ捨てに行ったら、集積所のゴミにカラスが一羽たかっていたんだけど、やって来た母親と目が合って、カラスは一旦飛び立ったんだ。それで母親がゴミ袋を置いて家に戻りかけたら、カラスが低く飛んで来て、後ろから母親の頭を蹴っ飛ばして飛び去った、とか。」
「ああー、カラスって利口だからね…お母さんにガン付けられたと思ったのかしら?」
富井は、ここで胸ポケットから小さな手帳を取り出して、しばらく頁を捲っていたが、
「あった、これだ。……そしたら被害者が、『そうそう、カラスって、ほんと小ズルい嫌な鳥だよな。…それにしても、あいつはカラスそのままな奴だ。名は体を表すって、全くよく言ったもんだ。…くそ!』ていうようなことを兄に言ったらしい。」
「それで兄が言うには、『聞き返したら、二郎は「こっちの話。」って言って黙ってしまって…私は、「烏」っていう字が名前についている人とトラブルになってるのかな、って思ったんです。…あの時、もっとちゃんと訊いておけば良かった…』と言ったんだ。」
「なるほど……それで容疑者の名前は?聞いてもいいのかしら?」
「うん、深山さんを信用して教えるけど、次の五名なんだ。」
と言って、富井は紙に以下の名前を記した。
・熊野健二(くまのけんじ)(20)山峰大学2年。被害者と同じサークルの後輩
・日田圭一(ひたけいいち)(21)山峰大学3年。被害者と同じ塾で数学を教えている
・似鳥恵(にたとりめぐみ)(21)山峰大学3年。被害者と同じ塾で英語を教えている
・黒川雅也(くろかわまさや)(22)山峰大学4年。被害者と同じサークルの先輩
・唐津康彦(からつやすひこ)(45)バイト先の塾長。山峰大学出身
*以下続く*(別解を防ぐため、一人の人名を修正しました!大変申し訳ありません。:12月2日 午前10時)
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