クイズ大陸



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?Submarin 2007/09/09 15:00
解決編


「所長、何してるんですか?」
中山弁護士が帰ってから、所長は紙に何か書き付けながら暗号文と向き合っていた。
「暗号解いてるに決まってるでしょ」
「さっきの話だともう読めてたような気がしたんですけど。」
「ルールが分かっただけね。全文なんてこのルールだと読み下せないわ。」
「僕にはよく分からないんですが、あの…『古くても、新しくても、鉈の位置は同じ』ってどういう意味だったんですか。」
「これよ」
所長はさっき書いていた紙の一枚を見せてくれた。
<tt>
いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせすん
=
あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゆよらりるれろわゐゑをん
</tt>

「…?」
いろは歌と五十音が対応して書いてあるのは分かったが、鉈というのは相変わらず分からなかった。
僕の戸惑い顔を見て、所長は変な顔をした。
「わかんないの? まだまだね。」
「降参です。どうして所長がこの対応表を一発で作れたのかわかりません。」
「もう。いろは歌と五十音順は『な』と『た』の位置が同じなのよ。」
あわててさっきの並びを確かめると、本当にその通りだった。
「それがなくても新しいとか古いとかで分かったわ。何しろ『ゐ』と『ゑ』があるし、日本語で言葉を並べる遣り方って少ないもの」
そうして所長は訳文を見せてくれた。

二階の廊下、西の奥から数えて四番目の吊ライト、私の書斎の戸を開けて、卓上の造付の鏡に反射させよ。光の当たるところのオルゴールに権利書は隠した。ラピス・ラズリの宝石のついたオルゴールは、苦労をかけた弁護士の中山に贈る。


「促音と濁点、長音は古典文にないから、文からの推測だけど。…それにしても簡単だったわね。私はもっと難しい暗号がよかったわ。」
「はあ。」
この元社長にしたって、そんなに難しい暗号を組んでいたら、解けなくなってトラブルになっていたのは目に見えていたから、それなりに簡単にしたんだろうと思ったけど、僕は言わないでおいた。
「ところで、屋敷がどうしたかとか聞いていたのはなぜです? 」
「あれ? 屋敷に隠してあるなら、社長にしたって暗号で示したものが動かされると困るから、何か指示したんじゃないかな、くらいだったんだけど。
じゃ、この弁護士さんに解決したって伝えておいて。」


後日談。
解決の数日後、中山弁護士から、お礼の手紙、通常の料金とともに、解決のお礼にと綺麗な木細工で、青い宝石のはめ込まれたオルゴールがこの事務所に寄贈された。
所長は、無欲な人ねと言った後、オルゴールなんか貰っても困ると口ではしきりにいっていたが、その日ずっと機嫌がよかったのを覚えている。
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