クイズ大陸



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ボスコーンの死刑囚たち ≫No. 1
?千夜一夜 2022/01/07 18:12囁き
 
.o○(なんだー、また囚人問題か…飽きた)

…と、思わないで頂ければ幸いです。 ……たぶん……ですけれども、ひと味違います。

――

とある宙域。艦橋にて、レヒスト少尉が指定時刻に直立不動の姿勢で待っていると、通信機から恐ろしい声が流れた。

「ボスコーンを代表してヘルマスより。おまえの報告は完全でもなく決定的でもない。」

映像が無いことが、より凄みを増幅しているためか、レヒスト少尉は自分の身体が震えるのを抑えきれなくなった。

ヘルマスは言った。
「報告書を精査分析することにより、レヒスト、お前の結論は誤りであると断定できる。すなわち、お前は3名ともにスパイであり、死刑を行うと上申して来たが、正しく分析すれば、3名のうちレンズマン側からのスパイは1名だけであり、残りの2名は正真正銘、ボスコーンに忠誠を誓った者であると判るはずだ。しかしながら、この2名のようにスパイであると疑われてしまうような無能の者ならば確かに死んでしまうほうが良いかもしれない。」

レヒストは冷や汗をかきながらひとことだけ答えた。
「はっ。」

ヘルマスはいつもより丁寧に命令を下した。
「3名のうちルーダーはスパイであるから死刑、エリロイおよびにカーナンにも死刑を宣告せよ。ただし、スパイではない2名が死刑宣告のこの状況下で自らの有能さを証明できれば無罪放免し一階級を下げた上で隊列に復帰させよ。通信を終わる。」

レヒスト少尉は過去にない事態に動揺したが、やがてひとつのことに思い至った。今回の処置を間違えれば自分こそが無能の罪ゆえに死刑となるのだと。
きちんと事案を処理して再度報告すればこれまでの貢献に鑑みて自分の首はかろうじてつながるに違いない。
若干の準備をした後、艦橋を出て営倉に向かったレヒストは3名の死刑囚を牢屋から引き出し、次のように話した。

「ここにゲーム用のカードが7枚ある。裏からみればどれも同じで、表には単色で、赤、橙、黄、緑、青、白、黒にカラーリングをしてある。」

レヒストは看守に命じて、カードをよく切り混ぜた上で、ルーダーに1枚を、エリロイに3枚を、カーナンには3枚を、囚人たちの前の卓上に伏せて配った。

レヒストは続けた。
「今、配られたカードを他の2名にけして見せてはならぬ。自分に配られたカードの色を確認せよ。」

3名はそっとカードの表の色を確認した。

レヒストは冷酷に言い放った。
「諸君、君たちはボスコーンにとって有害であるので全員、本日の夜に死刑、銃殺とする。」

みじろぐエリロイとカーナン。そしてルーダーのみは目を瞑りながらも平静であった。

レヒストは話を続けた。
「ただし、7色のカードのそれぞれについて、誰にどの色が配布されたかについて全てを確実に知ることが出来た者については死刑を免じると約束しよう。自分が無実だと思う者にはチャンスだ。だが、たとえ無実であっても正しく思考できないようであれば遠慮なく死刑とさせてもらう。」

エリロイが抗議した。
「スパイはルーダーだけです。」

レヒストは更に冷酷さを増して言い放った。
「よかろう、ならばエリロイ・カーナンの2名だけが生き残るようにするのが、お前たちエリロイ・カーナンにとっての正しい思考としよう。両名のうち片方だけ生き残るような思考は許さないこととする、死刑だ。無能だからだ。また、お前たちのみならずルーダーが生き残る状況を発生させても、お前たちは2人とも死刑とする。無能だからだ。」

カーナンは囁いた。「エリロイよ、ハードルをあげやがって…」

ここではじめてルーダーが口を開いた。
「少尉殿。どうやって他人のカードの色を知るんでさあ?」

レヒストは静かに言った。
「今から船内時間の夕刻まで、お前たちはここで、互いに好きなだけなんでも会話してよい。ただし、内緒話は禁じる。すなわち。囚人一人の発言は必ず他の2人の囚人にも聞こえるようにしなければならない。私と看守は、お前たちが正しく思考し正しく行動するかどうか、ここで見ていることとする。以上だ。」

――

【問題】
エリロイとカーナンは、7色のカードが誰に配布されたのかについてを完全に知ることができました。一方で、ルーダーにはそのことを知ることが完全にはできませんでした。かくしてルーダーのみが死刑となったのです。レヒストはことの顛末をつぶさに観察し、内容をまとめてヘルマスに報告しました。エリロイとカーナンは、確かに自分達がボスコーンにとって必要とされる有能な人材であることを証明したのです。

果たして、エリロイとカーナンが取ったその方法とは?

――

話が長いのは仕様です、申し訳ありません。
 
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