クイズ大陸



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?R-GRAY 2014/03/01 01:11
【おまけ】
ナルシストっぽくてすみません (+_+)……調子に乗って、こんな物まで書いてしまいました (-_-;)
この詩の、説明書きのような文です……しつこいかも知れませんが、
色々と味わっていってもらうと幸いです (^^;)
ああ……私も、こんな恋愛がしてみたいなあ……(;v;)



人気のない、静かな野原。
私と彼女は、2人並んで座り、黙って梅酒を酌み交わしていた。
彼女は不治の病で、余命いくばくもない。
今、こうして表に出てきて2人で酒を飲めているのが、不思議なくらいだ。

酒が、ほんのりと効いてきた頃。
不意に、霧が出てきた。
私は、ふと気になって彼女の方を向いた。
彼女も、私の目線に引き寄せられるように、私の方を向いた。

霧は、徐々に濃くなっていく。
彼女の細くて美しい眉とともに、彼女の顔が霧に覆われていく。
彼女が、霧の中に吸い込まれて消えてしまうような……
そんな錯覚に囚われた私は、たまらず彼女の手を掴んだ。

長患いのせいで、すっかり細くて華奢になってしまった腕。
腕だけではない。身体もまるで、枯れ芒のようだ。
今、この瞬間にも。
紅葉がはらはらと落ちるように、彼女の命は消えてしまうかも知れない。

思わず、私は彼女を抱き寄せていた。
そして、そのまま乱暴にボタンを剥ぎ取る。

やり場のない怒りと、悲しみと、切なさが、私を突き動かしていた。
彼女には、結局何もしてやれなかった。
私が彼女にしてやれるのは、彼女の身体に想いを刻み込む事のみ。
こぼれ出た涙は、止まる事を知らなかった。

彼女の顔を、一瞬覗き込む。

彼女は、初めは驚いていた。
普段は温厚な私の変貌ぶりに、戸惑いを隠せなかったのだろう。

けれど、こわばった顔は、すぐにほころんだ。
彼女の瞳からも、涙がこぼれ落ちた。
恥じらいと嬉しさで、彼女の頬が桜色に染まっていく。

明日をも知れぬ命に……一瞬灯った、桜色の美しい灯。
刹那に咲いて、儚く散る桜。
私は彼女の顔に、それを見ていた。

「……あやめ」

それだけ言うと、私は静かに唇を重ねた。



静かに重なり合う、2人。
それを、深い霧が優しく包んでいった……
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