Day.7 不自然な会話 ≫No. 1
りむじん
2013/05/18 18:14
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.Day.7 ミステリー
4番通りのとある喫茶店にて。
カウンターに座っていた男に探偵が話しかける。
「すみません。(名刺を差し出して)私こういう者ですが、ちょっとお時間宜しいでしょうか?いくつかお聞きしたい事がありまして」
「はあ、探偵さんねぇ。捜査か何かですか?」
「はい。ちょうどこの前、3番通りのとある豪邸で盗難事件が起きまして」
「3番通り?…あぁ、確かにあの辺りは裕福な家が多いですもんね。ベルナール家やデュボワ家、あとロベール家なんかは特に」
「おや、どうしてご存知で?」
「私も昔あの辺りに住んでいたのですよ。ただ2年前会社に裏切られて多額の借金を負い、仕方なく今まで住んでいた家を売り払って、今となってはこの4番通りで貧しく暮らしている身なのですよ。…すみません、私の話は余計でしたね」
「いえ、どうしてロベール家をご存知で?」
「隣だったんです。家がちょうど。あそこの主人とは顔を合わせる事も何度かありました」
「ではお知り合いだったと」
「そうですねぇ、いやぁ、あんまり大きな声じゃ言えないのですが、あそこの主人はとても性格が悪いんですよ。近所の人も大変迷惑していました。…勿論私も含めて」
「そうですか。というのも、今回被害に遭った家というのがそのロベール家なんです」
「やはりそうですか…。だからロベール家の名前に反応されたのですね。まさかあの家が盗難だなんてなぁ」
「ご存知なかったのですか?」
「えぇ。今初めて聞きました」
「一昨日辺りからニュースで散々報じられていましたが」
「あぁ、それは、先週ぐらいに家のラジオが壊れてしまったんですよ。5年ぐらい使ってた古い物なんで。毎朝それでニュースを聴くのが日課だったんです」
「テレビは?」
「古いラジオを5年も使い続けている人間が、テレビなんて高価な物を手にしているなんて考えられますか?」
「なるほど。大変ですねぇ。それなら大金に目がなくてもおかしくないでしょう」
「…何が言いたいんです?」
「単刀直入にお伺いします。事件が起きた時、どちらにいらっしゃいましたか?」
「えっ…」
「ロベールさんはその日夜7時に車で映画館へ向かい、9時に帰宅されたそうです。家が荒らされているのに気付いたのはその時です。つまりその2時間の間に泥棒が侵入したと警察は読んでいます。その時間帯にあなたが何をしていたのか聞いているのです」
「ちょ、ちょっと待って下さい、やだなぁ、それじゃまるで私が犯人だと疑っているみたいじゃないか」
「もちろんですよ?」
「ほ、本気で言ってるんですか?しかもなぜ私に…」
「別にあなただけに聞いている訳じゃありません。この辺りの人間には一通り聞いて回っているんですよ。ここ4日間で100人ぐらい、いや、120人ぐらいには話を聞いたかなぁ。今日はまだあなたを含めて20人ぐらいしか接触していない」
「この辺り?そんなぁ、ここは4番通りですよ?3番通りは調べ終わったのですか?」
「たいした目撃情報も得られませんでしたね。なにせ、あの辺りの人間はロベール家のご主人を軽蔑していたんでしょう?誰も事件には関心がなかった、むしろ、ざまあみろという感じでしたね。第一、他人から金品を奪わなければならないほど貧しい人間が、3番通りのような金持ちだらけの街に住みついている訳が無いでしょう」
「流石探偵さん、一理あるなぁ…」
「分かって頂けますよね?私の仕事なんです。捜査にご協力下さい。では、あなたのアリバイを」
「…会社です。会社にいました。夜8時まで4番通りの広告代理店で仕事をしていました」
「なかなか勤勉でいらっしゃる」
「会社を出たのが8時、…確か、それからそのまま電気屋へ向かいました」
「はあ、電気屋」
「買うつもりは無かったのですが、そう、安いラジオを探していました。しかし電球も買い換えなきゃいけない事も思い出し…結局店を出たのは9時以降ですかねぇ」
「それを証明してくれる人間は?」
「会社の同僚と、電気屋は…1時間くらい店内をうろうろしていたら店員の一人ぐらい覚えているでしょう」
「分かりました、ありがとうございます。その方々とは後ほど確認を取ることにします」
「…まだ疑ってるんですか?」
「はい。あなたが嘘を吐いている可能性もあるので」
「そうですか…残念です」
「あなたからは重要な情報をかなり多く引き出す事ができました。ご協力ありがとうございます。必ず犯人逮捕に結び付けます」
「それは、どうも…」
探偵は彼が犯人であると確信した。
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りむじん 2013/05/18 18:14
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