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影の伸びる速さ 最新レスです
?害調 2012/11/02 14:40囁き
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仮想水平面上の原点を根元として長さHの棒が鉛直に立っています.南向きを正として南北方向にy軸,西向きを正として東西方向にx軸をとります.簡単のため太陽は球形ではなく,無限平面形とし,これを太陽と呼ぶこととします.太陽は自身に垂直な平行光を発するとします.棒の先端Eから太陽へ下ろした垂線の足を点Sとすると,Sの座標のy成分は常に0であるといいます.また,垂線ESの長さは常に一定値Lであるとします.垂線ESとx軸の正の向きとのなす角をθとし,これを太陽高度と称し,日の出時刻を基準として時間軸tを定義し,θ=αtとします(α>0).光速をcとします.なお,本問では太陽は時刻t=0に東の空に突然現れたものとし,その直前までは仮想水平面上は真っ暗であったとします.以上の問題設定の下では,棒の影は常にx軸上にあることに留意してください.なお,0≦θ≦πとします.必要であればtanφの逆数arctanφを用いて構いませんが,arctanφの値域は-π/2<arctanφ<π/2であることに注意してください.

(1)x>0の場合を考えます.あるxを考えたときに,その点に届く光が初めて発せられる時刻T1(x)を求めて下さい.
(2)光速を考慮して,あるxに初めて光が届く時刻T2(x)を求めて下さい.

t=T2(x)以降は,日の入りまでそのxには光が当たり続けます.

(3)x<0の場合を考えます.あるxを考えたときに,その点に最後に届く光が発せられる時刻T3(x)を求めて下さい.
(4)光速を考慮して,あるxに最後に光が届く時刻T2(x)を求めて下さい.

t=T4(x)以降は,日の入りまでそのxには光が当たりません.

ここで気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが,実はt=T2(x)は位置xを定めると初めて光が当たる時刻tを知ることができますが,tを定めてその時に初めて光の当たる位置xを一意に定めることができません.例えば,かなり遠い点xを考えましょう.そこに初めて届くべき光はかなり早い時刻に発せられますが,届くのに相当の時間がかかります.一方,かなり近い点xを考えると,そこに光が初めて届く光が発せられるのは太陽が真上付近に来た時なので,太陽がそこまで来るのに時間がかかりますが,光が発せられたら直ぐに届きます.これらがバランスするとき,同じ時刻に複数の地点に初めて光が届くことになります.具体的に様子を述べると,ある時刻にある一点に初めて光が届き,影が分断されたあと,棒に近い側の影,遠い側の影ともに縮小していきます.よって,影の先端は各時刻tに対してt=T2(x)を満たす最小のx(>0)ということです.
一方で,x<0では単純です.t=T4(x)ですが,かなり近い位置xをとった時に,そこに最後に届く光が発せられる時刻のは,太陽が天頂を通過後直ぐに訪れ,また届くのも直ぐです.かなり遠い点xをとると,そこに最後に届く光が発せられるのは日の入りの少し前ですから,かなり時間が経ったあとであり,しかも光が実際に届くのにもかなりの時間を要し,簡単に言えば,時間とともに単純に影が伸びていくということです.つまり,x<0の場合,t=T4(x)というのは,影の先端がxにある時刻を表すことになります.ということは,x<0の場合,時刻tを選んだ時に影の先端xを与える関数x=x(t)が存在するはずで,それはT4(x)の逆関数です.しかし,これをx=(tの式)と陽に書くことは不可能に思われます.そこで,陰関数t-T4(x)=0(x<0)を用いて,この後の考察を行いましょう.

(5)x<0の場合について導関数dx/dtをxで表して下さい.陰関数定理を用います.

日の入り後も影は際限なく伸び続けます.影の長さはx<0より,-xと表されますが,影の長さが-xの時の影の伸び速度が(5)で求めた式の絶対値です.

(6)x→-0の時の影の伸び速度を求め,棒と太陽の距離,光速に依存しないことを示して下さい.
(7)日の入り後,影が伸び続けますが,その伸び速度の極限値を求め,光速を超えないことを示して下さい.

なお,影の伸び速度はx<0で単調増加なので,常に光速以下であることが分かります.

太陽が地上に対して角度θの光を発する時の影の長さQを作図するとH/Q=tanθとなるから,Q=H/tanθで,θ=αtの時,Q=H/tan(αt)である.よって,dQ/dt=-α/sin2(αt)となり,t=π/α(日の入りの時刻)には,dQ/dt=∞,つまり影の伸びる速さは無限大になることから,「光速を超えるものは存在するか」という問いに対して時々見受けられる回答ですが,これは光速を無限大と仮定した場合の話です.「光速を超えるものは存在するか」という質問の趣旨は,c=299792458[m/s]を想定した質問であり,c=∞を仮定して導いた結果を回答とするのはおかしなことです.本問を通じて,実際には光速を超えないことがお分かりいただけたのではないかと思います.今回は,太陽の形が現実とは違いますが,どんな形であれ,影の伸び速度が光速を超えないことは直感的に分かると思います.(ただし,※1で述べるように計算上光速を超えると予想される場所もあります)

※1
具体的な値L=150000000000[m],H=1[m],c=299792458[m/s],α=π/(12*3600)を代入して,T2(x)を観察すると,t≒500.36[s]で影が位置x≒2000000[m]に於いて二分されますが,この直後速度∞で両影が縮小します.棒に近い方の影はその後も,短い時間ではありますが,超光速で縮小を続け,(6)で求めた速度に近づいた後,(7)で求めた速度に収束していきます.棒から遠い方の影は常に超光速で縮小し,最終的にはその速度は光速に収束していきます.これは興味深い結果であります.

※2
よく練って出題したつもりですが,間違い等あればご指摘ください.
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