クイズ大陸



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ビン・ボウ警部補の事件録・R『悪の萌芽』 ≫No. 1
?空蝉 2012/10/10 12:02囁き
 郊外にある沼地のほとりに佇む大きな邸宅。
 その門の前に、一台のクーペが停車した。灰色のボディの所々に傷、汚れのあるその車体は、決して大事にされているとは言い難い。
 ドアが開き、男が一人、出てきた。灰色のスーツに、灰色縁のメガネ、おまけに顔色まで灰色ときている。よほど灰色が好きなのだろう。
 門のベルを鳴らすと、すぐに家主の声が応じた。「早いじゃないか。玄関の戸は開けておいた。勝手に入って、書斎まで来てくれ」
 門の扉が開き、男は敷地へと足を踏み入れる。アプローチに並ぶ蛙の置物を横目に、玄関を抜け、書斎を目指す。

 書斎の戸がノックされた。
 「入りたまえ」門と同じ声の主が、ドアに向かって言った。
 戸が開き、灰色の男が書斎へ入って来た。
 「待っていたよ、カルテル君」かけなさい、と、家の主は灰色の男にソファを薦める。「で、どうだった?あの男の情報は、集まったかね」
 「はい」灰色の男は持参したブリーフケースからいくつかの書類を取り出した。「あなたの仰ったとおり、ビン・ボウは、現在、リキッド警察署に勤めています。階級は警部補。大学卒業後、入署してからその成績は目覚ましく、もはや業界では英雄扱いです」
 「ふん、あの裏切り者めが!」家主はまだ吸い出だして間もない葉巻を、忌々しく灰皿に擦りつけた。「・・・・・・で、うまくいきそうなのか?例の計画のほうは」
 「はい。まだ準備段階でありますが、来月中には実行可能かと」
 「よし。では、君はそちらに専念してくれ。私はこれからあたりめを買ってくる」家主は立ち上がりかけたが、「そうだ――」と何か思い出したように再び腰を下ろすと、一冊の雑誌を取り出して、言った。「『月刊 ミステリー・マニア』の今月号のプレゼントクイズが解けんのだが、君の知恵を借りてもいいか?」
 「どうぞ」
 「では、いくぞ」『月刊 ミステリー・マニア』を広げ、家主は語りだした。「『あるところに一本道があった』」 
 「一本道なんて、どこにでもありますよ」
 「そんなところはつっこまんでいい。『道といってもそれほど長いわけではなく、せいぜい20m前後といったところだろう。道を行った終わりがちょうど崖になっており、毎日何人もの人が飛び降り自殺をするため、やがてその道には見張り小屋が設置された。以降、そこには常に見張りの人間が駐在し、24時間体制で、その道を誰も通らないように監視することになった』
 「いちいち人を置かなくても、監視カメラを付ければいいのに・・・・・・。あ、そうか、カメラだけあっても通ろうとする人を阻止できないか。いや、それだったらいっそのこと道そのものを通行止めにした方が楽なような・・・・・・」
 「あのなあ、カルテル君、これはクイズだから。・・・・・・で、続きだ。『ある朝、一人の女の自殺遺体が、崖の下で発見された。死亡時刻は前日の午後8時〜10時の間と判明している』
 「なんで自殺と分かるんでしょうねえ。他殺の線も捨て切れないと思いますが・・・・・・」
 「もう一度言うが、これはクイズだからな。『だがしかし、前日の午後10時までの段階で、見張りは誰ひとりとして、道を通った人間を見なかった!いったいどういうことだろう?もちろん、見張りはしっかりと監視しており、居眠りなどをしていたわけではない。また、崖に至る別の道があるわけでもない。監視領域にも死角はなかった。無論、女の死因は明らかに、その崖からの飛び降りによりものである』・・・・・・以上だ。解るかね?カルテル君」
 「はい。たぶんこういうことかと・・・・・・」

 「・・・・・・なるほど、そういうことか!いやいや、ありがとう。これで今月のプレゼント、『ビーフジャーキー 一週間分(三名様)』は私の物だ!」
 「いや、たぶん多数応募が考えられるので、抽選になったら外れるかと。なんせ、『月刊 ミステリー・マニア』の読者はたくさんいますからねえ、私も含めて。・・・・・・というか、クイズの締め切り昨日ですし」
 「なんだとおおおおおお!!!!!!」

 『月刊 ミステリー・マニア』プレゼントクイズの謎を解いて下さい 
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