クイズ大陸



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?nn)/ 2009/11/30 13:38
しばらくこのスレッドを見ていませんでしたら,活発な議論が行われていたのですね.
少し,数理情報学的にこの問題を見てみることにします.持っている本(大学の教科書)に書かれている内容の応用問題です.

挑戦者が C を選んだ時点では,C が当りである確率 P(C) は 1/3 です.より正確には「主観確率」と呼ぶべきで,当りか外れかは,その時点ではすでに決まっていますので,確率は1か0に決まっています.挑戦者にとって,それを決定するには知識が足りないので仮に 1/3 とおいているのです.

ここで,ディーラが B を開け,B が外れ (以後 notB で表します) であるという情報を付加しました.この情報 notB の追加による主観確率の変化 P(C) → P(C | notB) を見ます.縦棒 | の右側は条件を表していて,notB が正しいという条件の下での主観確率を表します.


(1) ディーラが答を知っていて,挑戦者もそのことを知っているとき


ディーラは notB であることを知っていますから,C が当りか外れ notC かに関係なく,B が外れであることを示せます.つまり,冷静に「自分が B 以外を選んだら B を開けようとディーラは決めていた」と考えれば,条件付き主観確率は P(notB | C) = P(notB | notC) = 1 です.ここで「主観」というのは挑戦者の主観です.挑戦者は C なのか notC なのか分かりませんので,両方の場合を考えているのです.

ベイズの定理によれば,
   P(C | notB) = P(C) P(notB | C) / ( P(C) P(notB | C) + P(notC) P(notB | notC) )
であり, P(notB | C) = P(notB | notC), P(C) + P(notC) = 1 より,P(C | notB) = P(C) = 1/3 が得られ,変化しません.

よって,P(A | notB) = P(notC | notB) = 1 - P(C | notB) = 2/3 なので,A に変えた方が有利だろうと挑戦者は考えるでしょう.

(2) ディーラは答を知らず,挑戦者もそのことを知っているとき


ディーラは notB を知らないで (あるいはうっかり転んで),偶然に notB を示しました.もしかしたら当りの箱を開けたかもしれないので,C が当たりか外れかによって,条件付き主観確率は異なり, P(notB | C) = 1, P(notB | notC) = 1/2 です.

これをベイズの定理に代入すれば,
   P(C | notB) = 1/3・1 / (1/3・1 + 2/3・1/2) = 1/2
であり,当りは C であるか A であるかの半々になりました.つまり,選択を変えても,変えなくても同じということになります.

標準的な解答は以上ですが,注意深い方はお気づきと思いますが,これは主観を含んでいますから,この通りにいくとは限りません.実は,挑戦者がどこを見るか,どう考えるかによるのです.


(3) ディーラが答を知っていて,挑戦者もそのことを知っているとき(その2)


挑戦者はディーラが A, B どちらの箱を開けようか一瞬迷ったことを見逃しませんでした.正解を知っていて迷うのは C が当りのときに限り, A が当り(したがって notC)なら迷うことはないので P(迷う | notC) ≒ 0 とみることができます.C が当りのときにも常に迷う訳ではないので,適当に P(迷う | C) = 0.2 とし,notC のときでも勘違いがあり得るので,P(迷う | notC) = 0.05 と見積もることにします.

これをベイズの定理に代入すれば,
   P(C | 迷う) = 1/3・1/5 / (1/3・1/5 + 2/3・1/20) = 2/3
が得られ,選択を変える気がなくなりました.

(4) ディーラが答を知っていて,挑戦者もそのことを知っているとき(その3)


こういう場面にありがちなように,ディーラは A, B どちらの箱を開けようか迷った演出を行いました.これを本当に迷っていると考え,(3) のように P(迷う | C) ≫ P(迷う | notC) とすることができますが,わざと迷った振りをしていると見て, P(迷った振り | C) ≦ P(迷った振り | notC) とすることもでき,結果は全く逆になります.もちろん,全く迷わずに選んでも「迷わなかった」のか「ひとつしか選択肢がない振りをした」のかで,最終選択が異なります.

たとえば,迷いがインチキ臭いと判断し,P(迷った振り | C) = 1/3, P(迷った振り | notC) = 1/2 とすれば,
   P(C | 迷った振り) = 1/3・1/3 / (1/3・1/3 + 2/3・1/2) = 1/4
で,選択を変える気満々になります.

他にも,様々な着目点や考え方があるでしょうし,挑戦者が持っている知識・経験や性格・感情・第六感に対する自信などにより,条件付き確率の見積り値が違います.加えて,「ディーラは答を知っているが,挑戦者はそのことに確信を持てないとき」など,いろいろな状況も考えられますので,目的の主観確率をどう評価するかは複雑です.

正確かつ詳細に規定されないと,この問題が多くの議論を生んでしまうことも,お分かりいただけましたでしょうか.

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